その2はこちら。
大学を中退し、劇団を主宰したがそっち方面では鳴かず飛ばずだった彼は、テレビの脚本を書いてなんとか採用される。といっても、他の脚本家が書けなくなったときの穴埋めであることが多く、とても、食えない。
「妻が勤めていましたので……要するに食べさせてもらっていました」
ちょっと間を置いたのは「ひも」という言葉を飲み込んだみたいだった(笑)。地方の高齢のオーディエンスにそれはさすがにまずいと判断したか。
「そんなわたしに、フジの月9を書かないかという話が来まして。ゲツクというのは、ご存じのようにフジテレビにおいて最も力をいれている枠ということです。『東京ラブストーリー』とか、『101回目のプロポーズ』とか。つまりありえないんですよ、二軍選手がいきなり日本シリーズの最終戦に起用されるみたいなもんですから。で、その打ち合わせの席がですね、やたらに陰鬱なんです。どうしたのかなあと思ったら事情がわかってきまして、今回もやっぱりわたしは補欠だったんです。それどころか、十数人の脚本家が降りてたんですよ。なんでかっていうと、中卒の検事の話なんかとても書けないというわけで」
つまり、「HERO」の話だったのだ。この降板劇については一度特集したことがあった。ただし、まさか十数名もキャンセルしていたとは思わなかった。
「なんでそんな(検察の)ストーリーにこだわるんですかって素直にプロデューサーに質問したんです。そしたら、キムタクさんの意向だって(笑)」
なるほど、なるほど。
「それにしたってですね。わたし、当時は警察と検察の区別もつかなかったんですよ。だから必死で勉強しまして、検察にも捜査権と逮捕権があるってことがわかったんです。そこでですね、検事を辞めた弁護士、通称ヤメ検の人に話を聞きに行ったら『君ねえ、検事というのは同時に何十件も事件をあつかうわけだよ。そりゃ捜査権も逮捕権もあるったって、忙しくて捜査も逮捕も現実にはやれるわけない』ってことで……」
福田氏の困惑は深い。以下次号。