その2「推定脅威」はこちら。
反原発の書、というよりも、現役の官僚が暴露する霞ヶ関のルールと、東電(この作品では関東電力)がいかにしてマスコミや政治家をコントロールするかのお仕事(まさしく、仕事だ)小説として興味深い。作者は完全に覆面作家で、インタビューでも実名を隠している(ひょっとしたらチームを組んで書き上げたのかもしれない)。
原発事故による影響で父を失った女性アナが、フリーのジャーナリストに転身。はねっかえりの官僚をまきこんで、電力会社がキャリア官僚に天下り先を提供する情報を得る。
電力会社の重役は、落選した議員のなかで有望な(しかも金に困っている)人物を次々に籠絡し、どのような政権交代が起ころうとも会社が安泰であるように布石を打っている。同じ時期に、日本海側の某県の知事が原発の再稼働を行わせない発言を繰り返しており、スキャンダルをねつ造することで会社は彼を失墜させる……
誰でもモデルを指摘することができる。知事は泉田新潟県知事だろうし、保守党に所属しながら反原発を唱える(世襲議員だから選挙資金集めのために節を曲げなくてもすむ)一匹狼は河野太郎なのは確実。俳優出身で原発に過激な発言をくりかえす議員はもちろん山本太郎。他にもたーくさんいるんでしょう。
官僚は国会対策で職場に泊まり込むことがよくあるので、盗聴器をしかけるのは簡単だとか、出身が東大でないと、というか東大法学部ではないとほんとに大変なんだなあとか、お勉強になります。
なぜこのタイトルになったか。真保裕一の「ホワイトアウト」とある部分が共通しているからだろう。向こうはダムをハイジャックすることによって下流域の住民を人質にとったが、こちらでは……え?もしこのテロが実現可能だとすれば、日本には標的が何千も存在することになってしまう!
その4「あぽやん」につづく。
原発ホワイトアウト 価格:¥ 1,728(税込) 発売日:2013-09-12 |