わたし、東映の女性映画路線にはまったく興味がなく、その嚆矢となったこの作品も未見でした。男の世界を描く三角マークの東映が、なんで女性映画なんだとの偏見があったし、画面が熱い五社英雄作品がまず苦手だしねえ。だいたい、主演の夏目雅子が鬼龍院花子だとばかり思っていましたもの。
いや、不明を恥じます。これは原作の力もあるだろうけれども、骨太のドラマが芯を貫いている。大正、昭和初期の高知における侠客(になりきれない男)の世界にまず驚かされる。まず、何をやって食べているのかよくわからない(笑)。
主人公である鬼龍院政五郎(仲代達矢)のモデルは実在の興行師だったようで、なるほど女を見る眼はある。彼は歌(岩下志麻)という本妻がありながら妾(中村晃子、新藤恵美)と同居し、加えて敵方の女中だった女(佳那晃子)も略奪する。
日下部五郎プロデューサーが社長の岡田に「こいつは半ば女衒みたいなやつで、自宅の一階に本妻、二階に妾を二人置いて、妻妾同居でやりまくるわ、よさそうな娘は自分で水揚げするわ、まあすごいんですわ」と形容したとおりの男。
実は文字が読めないコンプレックスをかかえ(だからインテリには弱い)、寝首をかかれることを恐れているくせに虚勢だけは常にはり、しかし弾ければどこまでも突っこんでいく……確かに魅力的な人物だ。
女性の方はもっと魅力的で、岩下志麻は能面のような表情を崩さず、「女将さん、(旦那の寝所へ)上がらせてもらいます」とほほ笑む妾たちを睥睨し、しかし嫉妬に苦しむ。この役が「極道の妻たち」につながったのがよくわかります。
五社監督は女優を脱がせるのがお得意なので、みんな盛大にヌードを披露してくれます。特にわたしが大好きな夏木マリのフルヌードはうれしかった……あ、やっぱり東映の小屋でやるにぴったりの映画だったのか。
夏目雅子は予想以上に健闘。惜しむらくは、仲代達矢にもう少しユーモアのセンスがあったら……主演が緒形拳だったら、とは誰でも考えたはず。その思いが「櫂」につながったのでしょう。もちろんそちらも、わたしは見ていないのだけれど。