![]() ![]() |
スティーブ・ジョブズ I 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2011-10-25
|
完全にスティーブ・ジョブズの側に立てば、各企業はこう総括できるだろうか。
ゼロックス……優秀な技術者を擁しながらコピー屋から脱却しようともしない
SONY……豊富なコンテンツと技術を活かすことができないのろま
マイクロソフト……美的感覚が劣っているのではなく、美的感覚がない
ヒューレット・パッカード……終わっている
Google……泥棒
この評伝は、しかし返す刀でジョブズの、そしてアップルの欠落もあからさまに描いている。
なにしろジョブズ自身が“絶対にいっしょに働きたくない人間”№1確定。部下の仕事をとりあえず罵倒、アイデアはすべて自分のものにする、感情的ですぐ泣き出す、簡単に社員の首を切る、スピリチュアル方面に傾倒している……
他にも、実は本当にオリジナルなものは発明していないとかの指摘もあって、一連の流れからすると確かにそうなのかも、とは思う。
でも、マックユーザーがウィンドウズを嘲笑することからもわかるように、アップルの製品はとにかく美しいし、所持していることが喜びに直結している。
自分のiPodになぜ事実上マニュアルやON/OFFボタンがないのかと面食らったけれど、そんなものを取っ払う美意識こそがアップルの、ジョブズの真骨頂だったわけだ。タップやスクロールするたびに、ユーザーと製品が一体化するような感覚になれるのも、彼の執念の結実なのがよく理解できた。スマホを買うときは、こりゃアンドロイドじゃなくてiPhoneにするかも。
それにしても面白すぎるぐらいに面白い本で、実の父母に捨てられ、ビジネス上の父親たちにも捨てられたドイツとシリアの血の入った青年が、余技かと思われたピクサーの成功によって復権していくあたり、わくわくする。
iTunesに楽曲を提供してもらうために各アーティストに直接交渉するなどのアクティブさにもびっくり。ジョーン・バエズの恋人だったのも初耳。
まあ、くどいようだけどそれでも一緒に働こうとは絶対に思いませんが。
※ジョブズの死からまもない出版だったこともあって、なかなかむずかしい記述もある。ルパート・マードック親子(盗聴野郎たち)との交流など、上梓があと三ヶ月遅れていたらそぉーっと削除されていたかも。