奇跡への絆

図師ひろき

旅行について1

2013年07月01日 22時42分49秒 | Weblog

 “UT”とは何の略称でしょう?

 “ET”ではなく“UT”です。

 正解は、「ユニバーサル・ツーリズム」です!

 ではユニバーサルツーリズムとは、何でしょう??

 “ユニバーサルデザイン”は、年齢や障がいの有無に関わらず、誰もが使いやすい製品や施設などの国際的規格のことですが、ユニバーサルツーリズムは、この発想に基づいて、工夫された移動や宿泊先を利用しながら楽しむ旅行のことです。

 ユニバーサルツーリズムにまつわることと言えば…今から4年前に行った家族旅行のことです。

 その時、すでに祖父は寝たきりでした。

 祖母も、なんとか在宅生活はしていましたが、介護が必要な状態でした。

 それでも家族が力を合わせれば旅行に行ける、今行かなければもう二度とみんなで旅行には行けない!と

「旅行の段取りは全部、俺がするから一緒に行こう!」

 半ば強引に準備を始めました。

 しかし、肝心の宿が見つかりません…

 車で移動可能な距離で、部屋に家族風呂が付いている宿を探しましたが、いくつかの宿からバリアフリーが十分でないことを理由に断られてしまいました。

 なんとか諸塚村にある温泉宿からいい返事をもらうことができた時には、精神的に疲れていました…

 それでも出発の朝には、テンションが上がり、まだ不安を抱いている家族をグイグイ引っ張って行きました。

 宿に着くと、段差やトイレなどはいたってノーマルな設備でしたが、何より車イスで廊下を行き来することや祖父をおんぶしながら食堂に行くことなどを快く認めてくれる家主さんに感謝感謝でした。

 部屋に入ってすぐに、祖父を裸にして、甥っ子も姪っ子も素っ裸になって、露天風呂に祖父を担いで行きました。

 風呂で祖父は浮かびました。

 私が背中から抱きしめていても、曲がることのない足や腰がプカプカと湯舟に揺られて、それが楽しくて子どもたちはケラケラ祖父の体を撫でたり揉んだりしていました。

 「こそばいいが!」

 祖父がなんとか動く手で、小さな手を振り払おうとしますが、ケラケラとさらにモミモミ。

 その光景を見ていた家族みんなの笑い声が、温泉より温かく心に染みました。

 「来てよかった」

 やはり最初で最後の祖父祖母一緒の旅行となりました。

 旅行から1年後に祖父は旅立ち、それから1年あとには祖母も静かに眠りました…

 あの笑い声に包まれる時間が増えるためにも、ユニバーサルツーリズムの取り組みが広がってほしいものです。