以前のブログ“手紙”で書き残した、私が字が書けなくなった時のことをこぼします。
正確には字が書けなくなったのではなく、書くのが嫌で嫌で強いストレスを感じていた頃があります。
中学2年の時、担任の先生から職員室に来るように言われました。
やばい・・・説教か・・・すると
「図師は、授業を受ける態度が変だぞ!自分で分かっているのか!」
鼻をほじりながらボケーっとすることなく、いたって普通に授業を聞いているつもりの私は全く心当たりがありませんでした。
「分かりませんが・・・」
「お前は、消しゴムを使うことが多すぎる!」
ハッとしました。
確かにその頃の私は、1日に1個は消しゴムを使い切っていました。
書道を習っていた私は、字を丁寧に書くことにこだわり、こだわりすぎ、自分の納得できる字が書けるまで、書いては消し、書いては消しを繰り返していました。
そうしているうちに、ノートは破れ、次のページに書き始め、また書いては消し、書いては消し・・・
当然、その時間に黒板に書かれた内容を写し切れず、友達からノートを借りることもたびたびでした。
午前中の授業が終わる頃には、私の机に周りは、消しゴムのくずの堤防ができる程でした。
何故、書くことが苦手になっていったのか・・・
大学で心理学を専攻し、青少年の発達心理学の研究にも没頭しました。
その時、“チック症”という症状について学びました。
チックは子供によく見られる病的な癖です。
まばたきや、首を振る、鼻をならす、咳払いをする、口をゆがめる、顔をしかめる、肩をゆするといった動作が、無意識のうちに何度も繰り返されるものです。
時には、大声で奇声を発する場合もあります。早い場合は4才すぎから始まりますが、7才から10才ころ始まるのが多いようです。
チックは、多くの場合、心因性で、その背景に、日常生活で、たとえば勉強で過度の期待をされるとか、周囲の家族の描く「良い子」であり続けるために、緊張や不安が続くような状況があり、さらに「いじめ」や、本人に納得のいかない叱られ方をしたなどの心理的ショックがきっかけになり発症します。
チックの子供の家庭では、しばしば家族の中で対人的な精神的緊張状態を見ることがあります。
たとえば、父親と母親の不仲、あるいは嫁姑の摩擦などです。
チックという症状で、むしろまわりの緊張状態の存在を表現しているといえるケースが、結構おおいのです。つまり、子供が最初に黄色信号を発信しているといえるのです。
“まさに、あの頃の俺はこれだったんだ!”と思いました。
中学の頃の我が家は、寒かったです。
おやじは仕事仕事、付き合い付き合いで帰宅は遅く、お袋はそんなおやじに不信感を抱き、冷たい喧嘩の絶えない家庭でした。
一つ下の妹は、素直にぐれました。
うらやましかった・・・
生徒会長をしていた私は、学校でも家でも良い子で居続けなければなりませんでした。
その時、字が書けなくなりました・・・
書いては消し、書いては消ししながらも、うまく書けた時は嬉しくて、そこにささやかな喜びを見出そうとしていたのかも知れません。
チックは、ほとんどの場合、一過性で、チツクそのものを指摘したり、あるいは止めさせようと叱ったりしないで、暖かく、優しく見守るだけで、数日から数週間で治まります。
実際、私も家庭が温さを取り戻すにつれて、症状は消えていきました。
その頃の痛みのおかげで、精神的不安を抱える方に偏見を持つことなく寄り添うことができ、精神保健福祉士として働く場も与えていただきました。
それらの経験が、今も弱い立場の方々のために働きたい意欲の源になっています。
そして何よりの力の源は、おやじとお袋の会話であり、笑顔です。
ありがとう。