深夜になり、呼吸の間隔が少しずつ長くなっていることに気が付きました・・・
2日前、施設入所しているじいちゃんを連れて帰りました。
すでに認知症が進行し、私と親父の区別もつかず、孫はおろか息子、娘の名前すら出てこなくなったじいちゃんが、やせこけたばあちゃんを見て分かるだろうか・・・
「シヅ、シヅ、頑張らんとだめじゃが、頑張らんとだめじゃが、頑張らんとだめじゃが!」
目も開かなくなったばあちゃんを枕元でじいちゃんは3度励ましました。
じいちゃんがばあちゃんを分かっただけでも家族は驚いていたのに、その声にうなづいて応えるばあちゃんの姿に、夫婦の絆を見ました。
死期が近づいていることは明らかで、親戚が入れ代わり立ち代り見舞ってくれ、耳元で話しかけてくれても反応は段々と乏しくなっていきました・・・
それでも毛布をはぐり、ゴソゴソと仕事を続けているばあちゃん・・・
おばが
「また明日、来るね。」
と部屋を出ようとしたとき、ばあちゃんの手が止まり、ドアに向かって手を振っているかのように動きました。
「まだ帰るなって言よっとかもよ・・・」
「急変したらいつでも連絡してね。」
それから30分も経たないうちに、呼吸はさらに浅く、さらに間隔が長くなってきました。
両親は先ほどまで集まっていた親戚に再び電話・・・
私は
「もう逝くよ!みんなそばに集まって!」
ばあちゃんの手を握り、大声で
「ばさん!ばさん!ばさん!もう少し・・・もう少し・・・ばさん!」
絞り出される呼吸は、最後の一滴でできた波紋が穏やかになくなるように止まりました・・・
そこにはまだ温もりそのままに安らかな寝顔のばあちゃんがいました。
私の心も安らかでした。
私はばあちゃんの手をさすり続けました・・・戻ってくる親戚に、せめて温かいままの手を握って欲しくて・・・そして間もなくなだれ込むようにばあちゃんは愛情に囲まれました・・・
真夜中、かかりつけの先生も駆けつけていただき、あらためて永眠を告げられたとき“泣いてもいいんですよ”と言われたようで、声を抑えることができませんでした。
「もう、施設やら病院には行かんでいい・・・ここがいい・・・」
その言葉を支えた家族。
「ばあちゃん、まだ心の準備ができちょらんよ・・・頑張らんといかんよ!」
その言葉に応えたばあちゃん。
ばあちゃんのおかげで、優しくなれたよ・・・
ばあちゃんのおかげで、強くなれたよ・・・
ばあちゃんのおかげで、また1つ信念を持つことができたよ。
最後になりましたが、ここまで在宅での看取りを支えていただいた、かかりつけ医の永田先生、そして丁寧で的確で、そして献身的に支えていただいた訪問看護の方々には、心から感謝申し上げます。
皆様方のおかげで、悔いなく精一杯の看取りをさせていただくことができました。
ありがとうございました。
明日と明後日は、通夜と告別式のためブログを休ませていただきます。