日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

古語短歌物語『花の風』第1巻「出会い」(承前)

2010年09月26日 | 日記
何気なく詠み始めた手遊びのような恋歌が、詠まずにはいられない苦しい偲び歌になった。一人では進んで行けない世界だった。

あいえたる えにしいかにや なりゆかん あとさきのよの ちぎりしらばや
会ひ得たる 縁いかにや 成り行かむ 後先の世の 契り知らばや

(ご縁があってお会いしましたが、この後どのように成り行くのでしょうか。過去から未来へつながる、あなたと私の約束を教えてください)

 女は気まぐれというより、能力の振幅が大きいのを、もてあましていた。素直な少女のような表情になったり、人生を歩み終えた老尼僧のような表情になったりした。

不用意に顔を向けると、女は男を正面から見据えていることがあった。

たまふれて こころおどろき みあぐれば いもがまなこに みいられてあり
魂触れて 心驚き 見上ぐれば 妹がまなこに 見入られてあり

(ふとしたときに、何げなく顔をあげると、あなたと視線が合って、私は心の奥底まで見通されたように、はっとしました)

いもこうる おもいわいよよ つのれども ただもだしいて おもをみまもる
妹恋ふる 思ひはいよゝ 募れども ただ黙しゐて 面を見守る

(あなたを恋い慕う思いは、ますます強くなりますが、何もいうことができず、私はただ黙ってあなたを見守っています)

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