雨上がりの朝の話。2月2日(土),曇っているものの冬には珍しい程の穏やかな朝を迎えました。外に出ると,草木が水分を吸い生気にみなぎっている風景が目に飛び込んできました。
マンサクの花が大きく開き,満開に近くなりました。まさか,昆虫はいないだろうなと思ってとりあえず近寄ってみると,予想外で,キンバエが一匹さっそく舐蜜行動をしていました。気温が高めなので,活動しやすいのでしょう。
さっそくカメラを持ち出して,撮影しようと近づくと,もう移動して枝にとまり,地面方向に頭を向けてじっとしていました。
トリミングをするのはほんとうは好きではないのですが,複眼に並んだ個眼を見るにはこうでもしないとよくわからないので,この手を使うことにして……。それにしても行儀よく並んだものです。自然の妙でもあります。二つの複眼の間に,単眼が見えます。
この複眼で見える環世界を研究対象にしている昆虫学者がいます。いろんなものがいろんなかたちで研究の対象になり,自然がすこし人間に身近なものになっていきます。そして,人間も自然の構成員の一つに過ぎないこともはっきりしてきます。
自然にはそれぞれのレベルでの見え方,存在の仕方というものがあります。階層性と呼んでいます。巨視的なレベルでは天文学的な観測,微視的なレベルでは原子・分子,遺伝子といった観察の世界があり,その間にさまざまなレベルの自然があります。
わたしは,カメラの愛好家ですが,昆虫程度の見え方に自然のふしぎと魅力を感じます。それで,人には好かれないようなイモムシであれ,ハエであれ,自分なりに知り尽くしたいと思うのです。わたしがとくに観察したいのは,肉眼で見える世界と虫眼鏡で覗く世界の境辺りに広がる風景です。
このキンバエはやがて花に移動。そうして蜜を舐め始めました。視覚・臭覚が生き生きとはたらいているのです。そうしてこの時間帯,蜜の一人占めです。