自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

イネ科植物の綿毛

2013-02-14 | 生物

庭の植木を見ていると,「こんなところにも綿毛の付いた実が飛んできているんだなあ」と思うときがあります。それも度々なのです。

過日,マンサクの花の写真を撮っているときもそうでした。肉眼でも気が付く大きさですが,このときはたまたまカメラのレンズに飛び込んできてわかったのです。それで,綿毛にピントを合わせて撮ったのが下の写真です。

イネ科植物の綿毛でしょう。道端や土手にはまだススキの類いの穂が残っていますから,そうしたところから風に乗ってやってきたのでしょう。 

ふつう綿毛についてそう細かく見つめることはありません。ふわっと風に飛ばされ,空に舞い上がる風景を目にする程度です。しかし,実一個をじっくり観察すると思いがけない世界が飛び込んできます。

殻に包まれて種子が入っている様子が覗えます。綿毛が付いている場所は片方の先付近です。落下傘の機能を十分に果たすために合理的にしくまれたかたちだとわかります。より軽くして,より遠くに飛ぶためには,綿毛にも知恵が組み込まれているでしょう。数は100本を軽く超す筈。乾燥具合で綿毛の曲がり方・伸び方に変化が現れる筈。加えて,格好の飛行日和を選んで舞い上がる筈。

でこぼこした地面にうまく着地できれば,細長い実はその場でじっと春を待ちます。なかには,水やら風で,何度も移動を余儀なくされる個体もあるでしょう。それでも,適当な温度,適当な水分さえあればなんとか発芽にこぎつけます。一株でつくられる種子は千,万を単位とする数にのぼりますから,そのうちほんの数本さえ大きくなれば子孫を維持するのにもう十分です。

一つ見つかったのだから,もうないかなと思ってすぐ近くの葉に目をやると,葉の下側にくっ付いたものがありました。たぶん同じ植物の綿毛でしょう。思いのほか,飛んで来ているようです。

この日に見た綿毛のきょうだいたちが,このようにして大自然のあちこちに運ばれているのです。それら無数の個体のことを,わたしたちはまったく気にかけることはありませんが,小さな風景から想像を巡らすたのしさを与えてくれるのも接写の世界です。