古希からの田舎暮らし

古希近くなってから都市近郊に小さな家を建てて移り住む。田舎にとけこんでゆく日々の暮らしぶりをお伝えします。

北朝鮮の人々を思う。 (2)

2010年12月03日 02時00分34秒 | 古希からの田舎暮らし 80歳から
『古希からの田舎暮らし』と題しながら北朝鮮への思いを書いてすみません。時局についてあれこれ書くつもりはないのですが、北朝鮮には特別な思いがあります。あの国の実情を自分が知らずに、北朝鮮礼賛本(総評議長だった市川誠の礼賛本など)を読んで、「心の中で旗を振っていた」ことへの痛い反省です。その影であの国の庶民が、貧しい者同士いがみ合い、陰口をたたき合い、差別し合い、看視し合い、あることないことで告発し合うように強制されて生きてきたことを思うと、じっとしておれないものがあるのです。きのうのつづきで残りの三冊の本を紹介します。
『凍土の共和国』1984年(昭和59年)発行 亜紀書房    現在では手に入りにくい本ですが、ネットの古本屋とか図書館にはあります。350ページの分厚い本ですが一気に読ませる力がありました。読みすすむにつれて、日本からの祖国訪問者が、『指導員』と称する監視役にじらされ、たかられ、おどされる様子に胸が痛くなるのですが、それでも読むしかない力をこの本は持っています。それが1960年からとしても何十年つづいたことでしょう。東洋的な、あらゆるからめ手を使った、おどし・ゆすり・たかり。人間をこのように追い詰めるのは陰湿な犯罪です。『民主主義人民共和国』という国家の名でこんなことが行われていた。それをぼくは知らなかった。言葉がありません。
『どん底の共和国』(北朝鮮不作の構造)……1989年(昭和64年発行 亜紀書房) 
『暗愚の共和国』(北朝鮮工業の奇怪)……1990年(平成元年発行 亜紀書房)
 北朝鮮についてはわずかな見聞で書いた「売らんかな」の暴露本がたくさん出版されています。1990年代から2000年代にかけては北朝鮮の食糧不足・餓死者・脱北者・庶民の生活実態・拉致被害者の様子・金正日の堕落した生活を書き立てた本、あるいは権力内部から告発する本はおそらく100冊を越えるでしょう。
 その中にあってこの二冊は良心的に祖国を思う本です。いまでは図書館で読むか古本屋でしか入手できません。なんとか祖国のために尽くそうと在日朝鮮人が私財で機材を購入して贈り、技術者の自分が祖国に渡って施設の建設を指導し、祖国の農業と工業について観察し、考察した本です。残るのは愚かな指導者に振り回される「絶望」ですが。『凍土の共和国』とこの二冊は北朝鮮問題の根源を学ぶ原典です。
 北朝鮮では金日成の『指導』で山の木を切って段々畑にして、耕地を増やしました。燃料もありませんから木を切るのは好都合でした。モンスーン地帯の山々は木々に覆われ、豊かな森になっている筈ですが、高さ500メートルを越す山が頂上まで耕されているのは異様な光景です。1980年代の主体農法は、土砂を流し、田んぼに石を流れ込ませ、川床を上げ、河川を氾濫させ、国土を荒廃させました。また電線は『指導』もあって地中に埋めてインフラ整備をしました。いまどうなっているか。これからどうなるか。
 金王朝はほどなく倒れます。しかし国土やインフラの問題は山積みのまま残されます。貧しい庶民の生活はそのままつづきます。バイキングで食事をするとき「北朝鮮の人たちが、にこやかに談笑しながらバイキング(ガツガツしないで好きなだけ食べられる)で食事をする日はいつになったら来るだろう」とため息が出ます。
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