1937年(昭和12年)にぼくは生まれました。日本が中国を相手に戦争を始めた年です。
でも「日本が戦争を仕掛けた」というと人聞きがわるので当時の軍部は『支那事変』と呼ぶことにしました。1939年(昭和14年)にソ連に戦争を仕掛けた、あの戦争を『ノモンハン事件』と呼んだように。
大日本帝国陸軍が戦争の目的として掲げたのは「暴支膺懲」(ぼうしようちょう)でした。「暴支膺懲」とは「暴虐な支那を懲らしめよ」という意味で、「弱い支那(中国)の蒋介石軍は2か月で懲らしめられる。ここでお灸をすえてやろう」と思い上った態度で戦争を仕掛けたのです。
戦争は、2か月どころか8年間も、ぼくがもうすぐ8歳になる1945年(昭和20年)8月まで続けられ、日本は負けました。
ぼくらの世代が「ものごころついた」のは戦後で、学校で平和教育を受けました。そしてほどなく77歳になります。
その間日本は戦争をすることなく、ぼくらは、あの「戦争」のいろんな話を聞き、いろんな映画を見、いろんな本を読み、いろんなことを考えて、生きてきました。
人生の残りの時間に、「もう一度読んでおきたい戦争の本を挙げよ」といわれたら、ぼくは次の3冊を挙げます。
○ 柏木兵三 『長い道』
残念ながらこの本はいま絶版のようです。でも大型活字本で神戸の図書館にも三木の図書館にもあります。また古本としては普通の値段で流通しています。ぼくも古本で入手しました。
内容は「日本海側の田舎に縁故疎開した少年が、子どもたちの勢力争いの谷間でいじめられながら、すくっと成長していく物語」です。児童の疎開をめぐってはもっと悲惨な物語がいっぱいあります。この小説は歌にも映画にもなったそうですが、ぼくは知りません。少年の世界を活写した、というか、ぼくの心情に一番近い、というか。
ネットで感想を見ると、若い人も読んで少年の世界を感じているようで、「これからも生きる本なんだ!」と思いました。
○ 加賀乙彦 『帰らざる夏』
ぼくより10年早く昭和2年に生まれた、作家・城山三郎は予科練に志願して入隊し、毎日毎日殴られ、敗戦後「廃墟となって生きた」と書いています。敗戦のとき10代だった多感な少年たちは、あの戦争に若い命をかけました。だから日本が負けたとき「廃墟になって生きる」しかありませんでした。あるいは加賀乙彦のように「一度死ぬ」しかありませんでした。
1929年(昭和4年)に生まれた加賀乙彦は、軍隊のエリートを育てる陸軍幼年学校に入学しました。小説の中で作家の等身大の少年は、敗戦を恥じて自決します。この作品を書かねば生きてゆけない、作家の命をかけた作品です。
ネットで若い人たちの感想文を見ると、「この作品の力」がしっかり次の世代に伝わっているのを感じました。
○ 江崎誠致 『ルソンの谷間』
作家・江崎誠致は1922年生れです。20代を兵士としてあの戦争で戦いました。ルソン島の戦いは「最悪の戦場」でした。それを記した本は多くありますが、この『ルソンの谷間』はそんな様子を伝えるだけでなく、戦争というものを、それを戦う人間というものを、正確に伝える作品です。何度も読み返している本です。今年また読むつもりです。
でも「日本が戦争を仕掛けた」というと人聞きがわるので当時の軍部は『支那事変』と呼ぶことにしました。1939年(昭和14年)にソ連に戦争を仕掛けた、あの戦争を『ノモンハン事件』と呼んだように。
大日本帝国陸軍が戦争の目的として掲げたのは「暴支膺懲」(ぼうしようちょう)でした。「暴支膺懲」とは「暴虐な支那を懲らしめよ」という意味で、「弱い支那(中国)の蒋介石軍は2か月で懲らしめられる。ここでお灸をすえてやろう」と思い上った態度で戦争を仕掛けたのです。
戦争は、2か月どころか8年間も、ぼくがもうすぐ8歳になる1945年(昭和20年)8月まで続けられ、日本は負けました。
ぼくらの世代が「ものごころついた」のは戦後で、学校で平和教育を受けました。そしてほどなく77歳になります。
その間日本は戦争をすることなく、ぼくらは、あの「戦争」のいろんな話を聞き、いろんな映画を見、いろんな本を読み、いろんなことを考えて、生きてきました。
人生の残りの時間に、「もう一度読んでおきたい戦争の本を挙げよ」といわれたら、ぼくは次の3冊を挙げます。
○ 柏木兵三 『長い道』
残念ながらこの本はいま絶版のようです。でも大型活字本で神戸の図書館にも三木の図書館にもあります。また古本としては普通の値段で流通しています。ぼくも古本で入手しました。
内容は「日本海側の田舎に縁故疎開した少年が、子どもたちの勢力争いの谷間でいじめられながら、すくっと成長していく物語」です。児童の疎開をめぐってはもっと悲惨な物語がいっぱいあります。この小説は歌にも映画にもなったそうですが、ぼくは知りません。少年の世界を活写した、というか、ぼくの心情に一番近い、というか。
ネットで感想を見ると、若い人も読んで少年の世界を感じているようで、「これからも生きる本なんだ!」と思いました。
○ 加賀乙彦 『帰らざる夏』
ぼくより10年早く昭和2年に生まれた、作家・城山三郎は予科練に志願して入隊し、毎日毎日殴られ、敗戦後「廃墟となって生きた」と書いています。敗戦のとき10代だった多感な少年たちは、あの戦争に若い命をかけました。だから日本が負けたとき「廃墟になって生きる」しかありませんでした。あるいは加賀乙彦のように「一度死ぬ」しかありませんでした。
1929年(昭和4年)に生まれた加賀乙彦は、軍隊のエリートを育てる陸軍幼年学校に入学しました。小説の中で作家の等身大の少年は、敗戦を恥じて自決します。この作品を書かねば生きてゆけない、作家の命をかけた作品です。
ネットで若い人たちの感想文を見ると、「この作品の力」がしっかり次の世代に伝わっているのを感じました。
○ 江崎誠致 『ルソンの谷間』
作家・江崎誠致は1922年生れです。20代を兵士としてあの戦争で戦いました。ルソン島の戦いは「最悪の戦場」でした。それを記した本は多くありますが、この『ルソンの谷間』はそんな様子を伝えるだけでなく、戦争というものを、それを戦う人間というものを、正確に伝える作品です。何度も読み返している本です。今年また読むつもりです。