らんかみち

童話から老話まで

押し売りの、今、昔

2014年02月27日 | 暮らしの落とし穴
 押し売りという言葉にノスタルジーを禁じ得ない人も多かろう。ぼくが子どもの頃に家に来たことがあって、何を売りに来たか覚えていないけど、とても怖かった記憶はある。
 押し売りは、法律の整備などによって絶滅した職種と考えているなら大間違いだ。古典的な押し売りは今も存在し、ノウハウは連綿と受け継がれて今日に至っている。のみならず、巧妙な手口を使った新手の押し売りが増殖しているばかりか、「押し買い」なる亜種まで誕生しているという。

 昨日来た押し売りは22歳の小柄で可愛い女の子だった。大阪の繁華街などを、ほろ酔い気分で歩いていると、「○○国の難民を援助しています」みたいな寄付の呼びかけを受けたもんだ。
 酔いが覚めて自分が買ったぬいぐるみとかを見たとき、酒のなせる業とはいえ、300円の品に5000円を払った我が身の愚かさを嘆かないことはなかった。

 強面の、正統派を自認する押し売りも絶滅したわけじゃない。「昨日ムショから出てきたばかりで飯が食えねぇんだ。これを買ってくれ」と、パンツのゴムを売りに来る伝統的な押し売りは現存している。一般家庭を訪れることはないかも知れないけど、お寺には頻繁に現れるらしい。

 菩提寺のご住職に、そういう押し売りの輩をどうやって退治するのか聞いたけど、「困っておられるのなら、寺の庭掃除をしてください、報酬は差し上げます」と提案するのだとか。
 それで大概の押し売りは「チッ、強欲坊主が!」とかって捨て台詞を残して立ち去るらしい。寺に慈悲を求めるならいざ知らず、寺から銭をせしめようとは身の程知らず。

 押し売りに来た可愛い女の子だけど、たぶん某キリスト教系新興宗教の信者と思う。あるときは北海道の珍味売り、あるときは健康食品売り、あるときは……。
 彼ら、質素な食事をしながら団体生活で修行をしていると、自分の考えってのをいつしか持てなくなる。
 純真な連中だからこそ教団から救い出してやりたいと思うが、門前払いをするのが精一杯だった。なんだか、後味が悪い……。