「ついに出た!」というのが第一の感想。
中国簡体字に比べてニッチな台湾華語だったので、日本市場が見込まれなかったと出版社評価(推測)。2011年3・11震災の200億円超えの義援金をきっかけに、台湾の存在が日本で再評価された機運に乗り、台湾華語の学習本も続々登場。
しかし、残念ながら、YouTuberの個人趣味的な本が大半で、にぎやかばかりで、勉強に必要な解説が乏しかったり、解説があっても裏付けとれてるの?の怪しいものが、多かった。
そんななか、今年記念すべき一冊が生まれた。台湾国立師範大学国語教育センターによる「実用台湾華語」初級。
権威の台湾華語教材「実用視聴華語」から、2015年に待望の「當代中文課程」にリニューアル。そして、2024年についに日本語版。出版社もちゃんと日本市場に力を入れたんだね。
実は私の教室も、一部の生徒の要望で台湾バージョン「當代中文課程」(英語解説)を使うことはあったが、解説が英語というのが大きなネックで、全生徒に紹介するには至らなかった。
しかし、日本語版が出た以上、もう推さない理由はどこにも存在しない。というわけで、さっそく私の教室で使用開始です。今から始めようという方は、実にラッキーですよ!
本書の特徴、
①総合的な流れ構成
一般的な教材の、文法による分断的なレッスン分けではなく、その課のシーンに必要な文法を横断的にいろいろ取り上げるところ。
そのため、初級のわりに、いろいろこなさなければならなくて大変。しかし、そもそも人間の言葉は、文法をミックスして運用するもの。そういう意味で、むしろ自然なスタイル。
たとえば「車が運転できる」(我會開車)が言えるようになりたいのに、「わるいけど、それは3か月後に教えます」じゃ、何のために勉強してるの?てなるよね。
本書のスタイルに慣れれば、早く自然な中国語の運用を始められる。
②ふんだんに、ちゃんとした解説
YouTuberの趣味的な本の典型は、文法解説不要の文章を、映えでかわいい構成でつづる。親切なものなら簡単な用法解説が載るくらい。その解説もなんだか、あやしい。
本書がそれらと一線を画すところもそこにある。台湾師範教育の最高学府「国立台湾師範大学」国語教育センターによる華語教育だけあって、解説がとてもしっかりしている。
③実生活に即した練習問題が多い
これでもかの、外一歩出れば即実践できる練習課題が用意されている。見やすいイラストもをふんだんに使用。
実は以前、きたないイラストのせいで、意味が分からないという教材があった。わかりやすいイラストって意外に重要。
④プロによる音源
男女ともに、声のプロらしくクリアでつやのある声色。スピードはネイティブより少々抑えた程度。
声を大にして言いたい。多くの台湾華語教材の音源は、芳しくない。失礼ながら、たまたま知り合いの台湾人に頼んだの?といった感想。
たしかに一般台湾人の話す華語は褒めたもんじゃない。「一般的な台湾人の声に慣れる」意味で、素人的な音源があってもいいかもしれない。
しかし、教材の音源はちゃんとアカデミックなものである必要があると思う。「きたない発音に慣れる」と「きたない発音を身につける」は全然違うこと。
以上、「実用台湾華語」初級について、長年台湾華語の教材を見つめてきた感想を含めて紹介しました。
この本を超える教材は、おそらくしばらく現れないので、強力にお勧めします。
最後は第10課をフルバージョンでアップ。前記説明を踏まえて内容を味わってみてください。
参考記事: