本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

アメリカインデアンの悲劇

2011-01-06 12:12:42 | Weblog
 ものの本によると、アメリカ先住民族すなわちインデアンの虐殺は百五十万人を超えるという。実数は多分わからないだろうが、ケタは合っているのではないか。この殺戮は先住民を殲滅する目的だったから、ナチ・ドイツのユダヤ人根絶の大虐殺と変わりない。

 昔の西部劇は、正義の騎兵隊に挑む悪のインデアンをやっつける構図だった。実際は先住民の領土を奪うために白人が仕掛けたわけだ。インデアンが戦うために立ち上がって当然だ。
 その西部劇が一変した。端緒を開いたのは「ソルジャー・ブルー」だろう。青い制服の兵士つまり騎兵隊がシャイアン族の老人、女子供を殺しまくったサンドクリークの虐殺を描いたものだ。次いで「ダンス・ウィズ・ウルブス」が先住民の悲哀に視点を据えた。
 その後、騎兵隊対インデアンというステレオタイプの西部劇はなくなった。

 ロバート・ウォーカーの『暗黒のクロスボウ』はチェロキー族の刑事が主人公である。ラストが「いま、彼女の手は彼の傷めた膝の上で、やさしくくりかえし円を描いていた…」で終わる。なにやら卑猥な行為のようだが、あとがきによると「傷めた膝(ウーンデッド・ニー)」のウーンデッド・ニーとは、サウスダコタ州のパインリッジ・インデアン保留地にある地名で、最後のインデアン大量虐殺の場所として有名とある。アメリカ人には分かる隠喩だろう。

 ついでに触れると、このインデアン刑事に対する白人の差別表現がやたら出てくる。今なお、蔑視があるのだろう。