本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

村役場の宿直春秋抄(15)

2008-03-27 11:15:06 | Weblog
村役場の宿直春秋抄(15)

ロシアの気概
 同じ六月十日に「露国の続戦論」と題した項もある。「露国は日本海の海戦以来、既に日本との戦争の要素は喪へり。然るに頑冥にも尚続戦論を発表す。…沙河、遼陽に敗れ、奉天に大敗し、旅順を喪い、海にあっては東洋艦隊を亡ぼし、今また波艦隊(バルチック艦隊)を挙げて日本海の海戦で殲滅(せんめつ)せしむ…尚、(ロシアが)続戦論を主張するが如きは、日本人のなし得るべきところか。もとより常識以外の頑迷の然らしむところなり。とは言えその意気に至りては之を日本人に移して可也」

 漢詩ではロシア人を「露助」とさげすむ一方、ロシアの頑迷さを常識外としながらも敵国の意気に感心している。その意気は日本人にも移したいという具合だ。掉尾に「余は露国贔屓(ひいき)に非ず。亦露探(ロシアのスパイ)にもあらざるなり」と付け加えたのはご愛嬌だ。

 余談を加える。明治三十八年七月十五日の京都の新聞に「波艦隊(バルチック艦隊)来寇の噂専らなりし当時、即ち四、五月の交は皆無の姿なりしが、既に全滅して海路も安全なりしを以て多数外人の来京したるものならん」とある。
 ロシアの艦隊が攻め来る噂で、外国人観光客が落ち込んでいたが、その艦隊に勝った報で再び外国人が京都を訪ねたという記事だ。戦局は外国人観光客にも影響を及ぼしていたわけだ。
 それにしても、開国四十年足らずで、京都観光が盛んだったことに驚くほかない。