散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

米国に“自己主張”を許した“諦めない姿勢”~「なでしこ」の意義と課題3

2015年07月06日 | スポーツ
W-Cup決勝戦、米国対なでしこジャパン。
試合終了後のインタビューでいみじくも宇津木選手が言った「10分間で決着が付くサッカーもある」との表現にすべては集約される。

開始早々から米国は攻勢に出た。しかし、日本は米国の自己主張に反発せず、そのプレーに付いていくだけであった。日本選手は米国選手に対して距離を置いて下がり、フリーでプレーする十分な間合いをと時間を許した。諦めない姿勢が「我慢」を生み、米国選手に心理までも簡単に読まれてしまったのだ。

左サイドから中央へ、そして右サイドへと米国は楽にボールを廻してサイドチェンジ、そこで受けた選手がターンの際に前のめりに躓いたが、そのミスにつけ込んでボールを奪い取れるほどの距離に選手はいなかった。
これが開始直後10分間に起こったことを象徴する“第1のシーン”だった。
 サッカー動画速報・日対米・ミドルハイライト(1:30)

続いて、左に少しドリブルしたが、日本選手は開いた間合いをゆっくり詰めるだけで、ペナルティエリアに走り込んだ選手に縦パスを簡単に通される。あわててマークに付くがCKにするのが精一杯の守備であった。
これが“第2のシーン”(前出続き1:42)だった。日本選手は集団として、我慢から安全第一になり、リスク回避が最大のリスクとして作用したのだ。

開始3分のCKにおいて、米国のゴールゲッターであるロイドはペナアークの更に後から走り込み、途中でグラウンダーのボールに合わせて斜め前に方向を変え、日本選手8人を前にしてシュートを決めた。走り込みを警戒してマーカーは手を挙げていたが、ロイドの先手を取られてタックルが間に合わなかった。
これが“第3のシーン”(更に前出続き2:00)だった。

この連続したシーンを分解すれば、どこか一つのシーンにおいて、リスクを取る考え方があれば、こうも易々と点を取られなかったはずだ。

2点目も左サイドからのフリーキックであるが、鮫島、宇津木の2枚で守備をしていたが、ボールを取れず、ファウルで止める状態であった。また、ロイドの走り込みも見事で、裏を取ってゴール前ではフリーでこぼれ球を決めた。

その後は守備体制が解体したかのようになり、選手個々がその場の判断だけでプレーをせざるを得なくなった。岩清水、海堀の最後のミスはそれらの集積と日本の状態を見透かした米国選手の判断の良さによる。ロイドのハットトリックとなる米国4点目、ハーフウェイライン辺りからのシュートはこの状態を象徴すると共に、技術の確かさを示すものだ。

佐々木監督は、それ以降での「2-1」を、最後まで諦めない「なでしこ」の姿勢として評価したいとコメントした。異論は無いが、米国の1点が、2点入れられた直後であったため、54分で実質的に試合は幕引き、とも云える。

それにしても米国の強さは際立っていた。
パワー、スピードだけでなく、技術、戦術の面でも日本を凌ぐものを持っていた。1対1を仕掛けることができ、日本のペナ-エリア内でマークを外してシュートも出来ていた。また、試合を通して一貫した戦術で攻撃を組み立てた。日本を良く研究して対策を具体的に考えていた。おそらく、トップダウンが徹底して、選手に浸透させたのであろう。ロイド選手は試合後のインタビューにおいて、繰り返しの練習を徹底的に行った旨の発言をしていたことからも窺われる。

それにひき換え日本は米国への対策をどの様に立て、具体策を選手に浸透させたのであろうか。勝ち進むにつれて、選手が互いにチームの一体感について触れ、雰囲気の良さをPRするかの様になって、やや奇異に感じていた。

それは、内部の団結力を高めるかもしれないが、外部情報に対して疎くなるように思われたからだ。例によって、マス・メディアはそれをネタにして、競争的に報道しているようにも見えた。何か「なでしこ」自身が自己陶酔の中にいる様にも思えた。しかし、実際の処は窺い知ることは出来ない領域なのだが。

さて、今後の課題については前回でも触れた。
今日の試合を見て、あったと思ったゲームコンセプトが不確かなことが良く判った。「最後まで諦めない」では、自己主張にはならないからだ。この言葉をもって、一致団結しても積極的活動のイメージは出てこない。

大切なのは「女バルサ」を更に徹底することだ。それには、やはりリーダーが必要だ。今日の後半の後半では、中盤の中心に宮間選手を置いてボールを捌きながら選手を動かしていた。今後、進むべきスタイルを表現している様に思える。

      
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