散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

保守主義における「政治意識」

2023年01月26日 | 政治

安倍晋三銃撃事件に発し、統一教会問題がクローズアップされる中で、メディアの報道だけでなく、SNSによる様々な情報を否応なく耳にする機会は今でも減っていないようだ。その間に話題となった自民党議員も多く、辞職に至った方も何人かいる。
それらの報道に接し、保守政党における政治的主張としての「保守主義」とは何を意味するのか?疑問が自然と湧き出てきた!

さて、少し前のことになるが、東京大学教授・宇野重規は『「シン・保守」の時代(中) あふれる「思想なき保守」』との論考を朝日新聞(2022年7月27日)に寄稿していた。
その冒頭、『現代は「曖昧な保守論がインフレした時代」と定義できる』と強く批判する。教授は『保守主義とは何か』(中公新書:2016年)において反フランス革命から現代日本に至る保守主義の系譜を議論している。

批判の内容は以下である。
「保守主義」は政治的な立場を論じる際に用いられるが、真意を理解して使われる例は昨今ほとんど見られない。男女平等や外国人との共生に抵抗するネット右翼的言説、古いものを無批判に賛美する言説が流布している。

 教授の批判は当たっていると思うが、ここでは別の視点から指摘を試みる。即ち、「思想なき保守」とは政治的主義・主張とは異なり、それ以前の漠然とした「政治意識」の問題であることを筆者は指摘したい。練られた「主義」と反射的「意識」は異なることを!

「政治意識」とは政治に対する信念、態度、判断、思考、感情などの心理的事象および行動様式のことである。一方、情報の刺激による反応は、内面化されたイメージに対する刺激となる(『現代政治学入門』(有斐閣:Ⅱ政治意識)。従って、当人が自覚的に構築した「政治思想=主義」とは異なると筆者は考える。
その視点から考えると、政治における「主義」は「政治意識」を自覚的にまとめた考え方と言える。それは米国の心理学者であり、行動経済学者でもあるダニエル・カーネマンにより提唱された人間の脳には2つの思考モード、ファスト思考(意識に相当)とスロー思考(主義に相当)との区別とも似ている(早川書房)。

現代は様々な情報が間断なく人々に届く。
最近、NHK会長に就任した稲葉氏はその就任直前の記者会見において「正確な情報を“間断なく提供”…」と述べていた。この言葉は現代のマスメディアを象徴的に表現している。また、政治に関心を持つ市民にとっても共通の情報環境だと考えられる。
私たちは考える余裕もなく、次から次へと情報を受けることを強いられている。NHKだけでなく、SNSも含めて!これがごく普通なのだ。従って、宇野教授には、是非、スロー思考から得られる政治的知見を存分に展開して頂きたい。