散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

日本経済低迷の主因~米国在住・冷泉彰彦氏の見立て

2016年04月13日 | 現代社会
年明け後に公表された経済指標はマイナス基調が多く、消費・生産ともに低迷、今年1-3月期のGDPもマイナスとなる可能性が高い。前年同期比の消費は、1月-0.6%、2月-1.5%。3月に大きな回復がない限り、マイナスは必至である。

需要が高まらないから生産も低迷する。鉱工業生産指数は3月+3.9%の見込みを入れても横這いになるだけ。更に、世界経済の鈍化懸念から設備投資も抑制気味となっている。10~12月期に続いて2期連続のマイナスになれば、景気後退が本格的に意識されるであろう。

筆者は一昨年の末、齋藤誠教授が日経に寄稿したアベノミクスの診断・処方について紹介した。改めて教授の説を確認すれば、「政策総動員の熱病」に罹り、「成長よりも生産維持を目標」にすべし、とのことだ。
 『デフレの診断・処方を誤る~2年後のアベノミクス141212』

更に昨年の末、一見は華々しく、円安・株高を導き、デフレ心理を和らげたが、実質的な成果に乏しい3年間と総括した。その後は新アベノミクスにも関心を向けることはなく、経済現象を社会の中に位置づけ、その全体像と先行きを考えることに注力している。
 『「派手な空体語」と「隠せぬ現実」~3年目のアベノミクス151222』

消費税引き上げ延期説も出るなかで、日本経済の低迷について、概要をまとめて問題提起した論考がJMM(Japan Mail Media) No.892に出てきた。それを「表題」にとって紹介する。

そこで、冷泉氏は外部要因(世界経済一般に共通の問題)と内部要因(日本独自の問題)に分けて整理する。重複部分をまとめて簡易化すると以下。

外部要因は、
(1-1)大量生産品は人件費の安い地域へシフトして低コスト化。
(1-2)エネルギー源の多様化が進み、エネルギー価格が安値安定。
(1-3)IT化による事務コストの削減が進む。
(1-4)機械製品・食料品等は生産技術が進展し、コストが下落。
(1-5)電子機器端末の多機能化と標準化、ハードの市場と価格は縮小。
 以上が構造的な変化、結果としての現象は、
(1-6)中、伯、露、トルコ等新興国経済の急速なスローダウン。
(1-7)欧州だけでなく、北米にもスローダウンの兆し。

内部要因は、
(2-1)人口減・債務累積による投資、消費の減退。
(2-2)高人件費にため、大量生産拠点の地位を奪い返せない。
(2-3)「現地生産化」により生産量と雇用が流出。
(2-4)エレクトロニクス産業は重電(法人・公共需要)と部品産業へ逃避。
(2-5)長期的でリスクを選好する資金が国内に決定的に不足、
     一方、国際的な資金調達にも躊躇。結果として、
     技術や人材に比べ、慢性的な資金不足のため産業が拡大できない。
(2-6)リスク選好資金の不足のため、金融業の発展を阻害。
(2-7)プログラムやコーディングを担う人材の社会的・経済的地位が低い。
     従って、高付加価値を生み出す人材の育成ができない。
     一方で、「ハード製造復興」のセンチメントが根強い。
(2-8)農業、事務部門、サービス業において生産性が低い。
(2-9)資本主義の根幹にある制度インフラに実効性が伴わない。
(2-10)実用的な英語教育が実践できていない。
(2-11)非就労人口の世論形成への関与が増大。

整理されていない部分、米国的な見方の部分が目立つように感じる。しかし、問題提起としては一つの全体像を提起している。日本の中でも先ずは全体像の整理、味方を多くの学者、研究機関が提起することが必要であろう。

      
コメント
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