散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

異次元緩和と真珠湾攻撃~短期決戦・気分は晴れた・戦略なし

2013年07月07日 | 現代社会
表題のアナロジーは日本だけでなく、諸外国のジャーナリズムも好んで使っているようだ。何が似ているのか?サプライズアタックである。そして、現状で何を評価するのか?と問われれば、安部首相は「デフレで淀んでいた空気を追い払った」と選挙演説の枕詞に使っているようだ。
しかし、真珠湾攻撃の時も、日本国民の気分は解放され、盛り上がったようだ。アメリカを叩いたのであるから、国民的に歓迎されたのは良く判る。
 『日米軍事同盟の意味(2) 20130705』
 
一方、異次元緩和はどうだろうか。円安・株高は輸出企業と株の持主にとっては、価値があるが、逆に輸入インフレの懸念も日増しに話題になっている。これまでのデフレもごく普通に働いている人から見ると、給料が変わらず、多少は物価が下がっているのでえあるから、そこそこの感覚ではないだろうか。筆者に個人的感覚では、気分が晴れた感じは全くしない。それは、これまでの生活感覚と比べ、何も変わるところがないからである。

黒田日銀総裁は「打つべき手はすべて打った」と述べているが、極めて時間感覚が短い政策になる。山本五十六も艦隊決戦主義で真珠湾攻撃に成功したが、しかし、奇襲は元来、予期しないものであって、成功して始めて奇襲になる。しかし、逆に手の内を晒すわけだから、行動の自由は狭められる。

異次元緩和においても、マネタリベースは上昇し、緩和された金は日銀に積み重なっているようだ。長期金利も上がり、基本的な処で最初の思惑とは離れている点がある。結局、強調できるのか「デフレの暗雲を払った」という祈祷師まがいのこと以外は、なさそうである。

では、長期的戦略はあるのだろうか?黒田総裁は「出口戦略」は考えていない。とこことだから、長期の見通しもないように思える。山本は「半年、一年は暴れてみせる」と言い、登場英機も「人間、たまには清水の舞台から飛び降りることも必要」との言葉を残して開戦に臨んだ。

しかし、日本海軍は真珠湾攻撃の成功の後、南方・東南アジア攻略で成果を上げた。これはまともに対米戦争を始めなくても可能であったはずだし、米国も正面から日本と戦う意思もなかったはずだ。

異次元緩和も同じ状況の様に思える。成長戦略・財政健全化は特に異次元緩和を必要とはしなかったはずだ。元々、大企業の資金は余っている。新しいビジネスは可能なのだ。アベノミクスなどと言わなくても成長戦略は取れるし、規制緩和も可能である。余計に金を積み上げ、結局、国民へツケを回すようになるだけだ。この意味から異次元緩和と真珠湾攻撃はよく似ているのだ。