朝顔

日々の見聞からトンガったことを探して、できるだけ丸く書いてみたいと思います。

映画「グレース・オブ・モナコ」

2014-10-31 | もろもろの事
モナコは地中海に面した港町で、陸側はすべてフランス、東に数十キロ行くとイタリアになる小さな独立国です。



この映画のモデルとなったグレース・ケリーは20世紀のアメリカ映画界で最も有名な女優の一人です。第二次世界大戦後の1956年、カンヌ国際映画祭で知り合ったモナコ大公レーニエ3世と結婚。女優業を完全に引退してモナコ公妃となります。

ネタバレになるので物語の後半の筋は書きませんが、当時フランスはアフリカ地中海沿岸の植民地、アルジェリアの独立運動に直面していました。フランス大統領ド・ゴールは、戦後の国家復興に加えてアルジェリア内戦に必要な戦費で財政的に大変困難な政治状況でした。

そこで目をつけたのが「独立国」モナコの企業への課税とその税収をモナコ保護の見返りとして、フランスに上納させることでした。(モナコは課税回避地として現在でも有名です)

当然レーニエ3世はそれに反対するのですが、水道、電気、食料、陸上交通、国防などすべてをフランスに依存する小国にとってそれを阻止する方法も交渉余地もありません。

純粋にアメリカで生まれて育ったグレースは、小さいとはいえ欧州の古い伝統ある王室とそのスタッフの言動には馴染めません。(なにか、某皇太子妃を連想させるエピソードです)

ですが、考えぬいたある作戦を実行するため、懸命に上流階級フランス語や貴族的プロトコルを学び始めます。
このあたりは、「マイ・フェア・レディー」や「舞妓はレディー」の筋立てに似た面白さがありました。

伝統的王室を全くもたないアメリカ国民は、グレースのことを擬似的にアメリカの王妃とも感じていたことでしょう。その意味でアメリカの中高年映画ファンを狙ったいかにもハリウッド映画だと思いました。

きらびやかな儀式、舞踏会、晩餐会、素晴らしい衣装など、ビジュアルの見どころ満載です。

中年以上のアメリカ人ならほとんどの人がグレース・ケリーの交通事故死を知っているでしょう。それを暗示するモナコの急峻な狭い坂道を車で疾走してアメリカ人牧師に会いにいくシーンが出てきますが、実際の悲劇のことは映画では全く触れていません。

身も蓋もないことかもしれませんが、このストーリーでは、むしろド・ゴール大統領に味方したくなりました。租税回避を狙う大企業や大金持ちとモナコの王室・貴族、それらを保護して上前をはねるのがモナコ公国のビジネスモデルですから。

モナコには20年ほど前の年末年始休暇で今はいない父と犬を含めて家族旅行したことがあるので、映画のロケシーンも懐かしく楽しみました。
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