アクア説は、別名アクア・エイプ説あるいは水生類人猿説とも呼ばれます。この学説は、ドイツのマックス・ヴェシュテンヘーファー(Max WESTENHOFER)[1871-1957]が1942年に唱え、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]が唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]が一般向けの本を書いたことで有名になった説です。
このアクア説は、初期人類の段階で海や川で進化したというものです。
エレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]
(経歴)
エレイン・モーガンは、1920年11月7日に、イギリスのウェールズ、ホプキンズタウンでエレイン・フロイドとして生まれました。やがて、オックスフォード大学に進学し、英文学を専攻して卒業します。1945年に、モリエン・モーガン(Morien MORGAN)と結婚し、名前がエレイン・モーガンになりました。
モーガンは、1950年代にテレビドラマの台本や新聞のコラム等を執筆します。やがて、モーガンはアクア説に気付き、デズモンド・モリス(Desmond MORRIS)を通じて、アリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]を紹介してもらいました。モーガンにとって幸いだったことは、アリスター・ハーディーが自分と同じ大学出身だったことでしょう。やがて、モーガンは1972年から1997年にかけて5冊の本を執筆します。ハーディーがアクア説についてわずか3つしか論考を残さなかったのに対し、モーガンは人類進化について勉強しながらさらにアクア説を補強していきました。
モーガンは、2006年にイギリスのグラモーガン大学から名誉文学博士号を授与されました。長年の功績に対してでしょう。しかし、2013年7月12日に92歳で死去しました。後半の人生は、アクア説の普及と補強に徹したと言えるでしょう。
(学説)
アクア説については、当初、アリスター・ハーディーが自分の考えを本にまとめるということでしたが、とうとうハーディーは本を執筆しませんでした。そこで、エレイン・モーガンは、自身でハーディーの説を補強することができる論文を多く読み、その成果を以下の5冊の本にまとめています。
モーガンは多くの本を書いていますが、アクア説について言及したものは以下の5冊で、すべて和訳されどうぶつ社から刊行されています。
- Morgan(1972)『The Descent of Woman』[『女の由来』(1997)]
- Morgan(1982)『The Aquatic Ape』[『人は海辺で進化した』(1998)]
- Morgan(1990)『The Scars of Evolution』[『進化の傷あと』(1999)]
- Morgan(1995)『The Descent of the Child』[『子宮の中のエイリアン』(1998)]
- Morgan(1997)『The Aquatic Ape Hypothesis』[『人類の起源論争』(1999)]
ここまでまとめたエレイン・モーガンの功績は大きく、アクア説は、確かにその入口はマックス・ヴェシュテンヘーファーやアリスター・ハーディーでしたが、さらに深く論考したのはエレイン・モーガンでした。個人的には、アクア説はモーガンの説と呼んでもいいのではないかと思います。
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女の由来―もう1つの人類進化論 価格:¥ 2,625(税込) 発売日:1997-12 |
モーガン(1997)『女の由来』表紙
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人は海辺で進化した―人類進化の新理論 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:1998-03 |
モーガン(1998)『人は海辺で進化した』表紙
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進化の傷あと―身体が語る人類の起源 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:1999-01 |
モーガン(1999)『進化の傷あと』表紙
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子宮の中のエイリアン―母と子の関係はどう進化してきたか 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:1998-09 |
モーガン(1998)『子宮の中のエイリアン』表紙
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人類の起源論争―アクア説はなぜ異端なのか? 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:1999-12 |
モーガン(1999)『人類の起源論争』表紙