山門を入り、参道を進んで、右へ。
境内を右から左へ石造物を見て回り終えた。
男坂を上がって、本堂のある上の境内へ移動する。
石段を上るのは苦手だが、眺める分にはかまわない。
目黒不動の男坂は、スキッとした姿形が素晴らしい。
男坂下、右側の石垣にはめ込まれている石板には、
「奉寄進石垣
亀岡久兵衛政卿
元禄十二(1699)己卯年九月弐拾八日」とある。
石段とは書いてないが、石段は石垣に含まれるのではないか。
亀岡家は、目黒不動のメインスポンサー。
いろんな石造物の寄進者名に「亀岡」の名が見られる。
亀岡家については、男坂上、都内最古の狛犬の項で詳述します。
石垣の両側の玉垣には、普通、講中の名前が刻されているものだが、この寺ではちょっと違う。
なんとお経が刻まれているのです。
男坂下の道標に、「男坂 経につつまれ 不動心」とある意味が、これで分かる。
石段の一番下、右に、まず「佛説聖不動経」とお経の名前が。
お不動さんをお参りするならば、真言とこの不動経を、唱えればいいのだそうだ。
お経の中でも短い方で、漢字102文字、唱えても1分もあれば十分という短さ。
次の経文は、石段の左側、左右交互に進んでゆきます。
この時大会に 一人の明王あり
この大明王は 大威力あり
大悲の徳の故に 青黒の形を現じ
大定の徳の故に 金剛石に座り
大いなる智慧の故に 大火焔を現したまう
大智の剣を執って 貪瞋痴を害し
三昧の索を持して 難伏の者を縛す
無相の法身は 虚空と同体なれば
その住む処なく ただ衆生の
心想の中に 住したまう 衆生の意想は
それぞれ不同なれば 衆生の心に従って
しかも利益をなし 所求円満せしたまう
その時 大会は この経を説きたたうを聞き
皆、大いに歓喜し 信受し奉行せり
ぶっせつしょうふどうきょう
これで仏説聖不動経は、終わり。
次の4本は、お経ではなく、山岳修行者の山伏の決まり文句。
我が身を見れば 菩提心を発し
我の説くを聴けば 大智慧を得る
我が名を聞けば 惑いを断じて修善をなし
我が心を知れば 即身成仏す。