福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

家庭不和に悩み僧侶に相談したが相手にされずオウムにはいった

2020-10-04 | 法話
仏教タイムスに家庭不和に悩みオウムにはいったという少女の記事がありました。概要次のようなものです。「彼女は高校生の頃、家庭内の不和に悩むようになり、学校の図書室で哲学書や宗教書を読みあさり「空」という教えに出会い、彼女はこの「空」の教えによって自分は救われると思った。そして学校近くにあった禅寺を訪ね、寺の僧侶に「空」の意味について問いかけたが、そこで返ってきたのは「そんな難しいこと、わしに聞くな」という言葉だった。ほどなくして彼女はオウム真理教の門を叩くことになる。」というものです。これをみると二つの問題点が浮かび上がります。
1、まず「空」を答えず突き放した僧侶の怠慢があります。実際殆どの僧侶はこういう答えをするでしょう。しかし「空」そのものを答えられなくても、少女の苦悩に寄り添う姿勢はあってしかるべきでした。一緒に悩む姿を見せるだけでもどんなにこの少女が救われたかわかりません。しかし自分も苦悩のどん底にあるときにこのように僧侶に相談するかと言われれば「ノー」でしょう。最初から期待していなかったでしょう。そういう意味でもこうして相談を受けたというだけでもこの僧侶には大変な責任があったのです。これを門前払いしたのは万死に値します。私はこういう相談を受けることがありますが、その場合はどこまでも何度でも相談に乗ります。「拝めばおかげはある」ということを手を替え品を変えて説きます。時間はかかることがあっても紆余曲折の後には必ず好転しています。
2、少女が読書して「空」が苦悩を救う意味があると気が付いたことは素晴らしいことでした。「空」はまさに般若心経の説くそのままの意義を発揮しています。「照見五蘊皆空、度一切苦厄」です。この少女が読んだ本にさらに具体的に「空によって救われる実例」を示していたら少女はオウムに行かなくて済んだと思われます。抽象的な経文を実人生の救いにどのようにして結びつけるかは常に問われる本質的な課題です。新興宗教がはやるのはここをそれらしく説くからです。
私なら以下のようなことを少女に説いたかもしれません。・「般若心経を唱えれば諸仏諸天が必ず来て護って下さる」(「なぜに般若をもって法楽となすや、かの如来などはみな般若の威力によって生ずるが故に、諸天などはみな般若の威力によって生ずるがゆえに、般若を聞くときに往恩を報ぜんがための故にきたりて護持をなすなり。妙極堂教戒(浄厳)」)。・金沢雲龍寺住職、荒崎良徳師は「般若心経に救われた私」と題する一文を大法輪22年8月号に載せている。「昭和58年私(荒崎)は大きな苦しみに出会い、自殺を考えるに至った。毎日暗いうちから本堂の観音様の前で「般若心経」を唱え続けた。ある日、「度一切苦厄」のためには「照見五蘊皆空」でなければならないと気が付いた。ここですべてが「空」であると覚れば一切苦厄から救われるのである。 ではどうすれば「空」を覚れるのかそれは其の前の「般若波羅蜜多時」を深く行じた時である。ここで般若波羅蜜多とは布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の六波羅蜜すべてを指すものなので此の代表として私は布施波羅蜜多を行じようと思い立った。僧侶として布施できるものは『法』しかないとおもい各宗派の高僧にきてもらい苦しみ真只中の58年に「金沢南無の会」を立ち上げた。この会を続けていくうち、各宗の高僧の法話と聴衆の鋭い質問に自身も広く新しい世界に踏み込めた。写経するようになり其の中で無限に広がる仏様の世界に身を委ねることができるようになった。自殺を考えていた過去が遠い夢の中のように思える。」・最後に自分自身の経験を話します。何十年も心経読誦・写経を毎朝続けています。四国霊場にも寺寺に3度以上心経写経を奉納しました。おかげでいろいろな願いがどんどん成就、本当にすごいおかげがあり、そしてすごい事が書いてあるお経だとわかった。神仏が読むとお喜びになるはずだということも感じられるようになった。そしてこのお経が作られた動機はまさに日々苦しむ衆生をいかにして救ってやるかという仏様の大慈悲によるものであるということもかんじられるようになった。「度一切苦」「能除一切苦」と短いお経の中で何度も「苦」をすくってやるぞとおしゃっているのです。繰り返し読誦すれば救われないわけがありません。・・といったようなことを話すと思います。

3、さらに最近の話題では以前スーパーボランテアとして有名になった尾畠春夫さんの「朝の来ない夜はない」という言葉を答えとしてもいいと思います。「すべての出来事は空であり実体はない、随って家庭不和ごときも実体はないもの、祈れば心経により諸仏諸菩薩諸天が護ってくださり必ず事態は好転する・・。つまるところ『おかげは必ず出る』」ということを説きます。
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