福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 4/14巻の4/13

2024-07-17 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 4/14巻の4/13

四、    放生して感應を得る事。

江州甲賀郡(滋賀県南東部)の傍に男ありしが元来貧にして更に依方なき者なり。其の妻庸(つね)に隣家に傭(やとわ)れて機(はた)を織り其の値を取りて夫婦の渡世の種としけり。一時女房密かに布一端を織て夫に與ふれば、やがて請取て賣べきよしにて箭橋の津(矢橋(やばせ)は滋賀県草津市の集落地名。矢橋から船に乗り対岸の石場に達すると東海道の近道になることから、古くから琵琶湖岸の港町として栄えた)海人の方へ行きけるが折節網を曳きけるに一つの大亀を得たり。是を彼の男見て布一端に易とりて亀に向かって曰、汝は長命の質をうけたるの今大故に値事を見るに忍ばず、貧家の我なれども一端の布にかえたり。天質を遂げよと云て放ち遣りけり。さて如是になるにより手を空しくして家に皈り又妻にむかい件のありさまを語りければ、女房厳しく怒りて、今日の営みだにもならぬ身の慈仁の動(はたらき)近比(ちかごろ)似合(にあひ)申さざる事どもかな、角(かく)し玉へばとて渡世のためになる方便や侍るとぞ責めめるが其の後夫久しからずして病死しけるが、心胸に陽気あればとて二日葬らずなんありき。二日の暮方に蘇生して語りて曰、我閻魔の廳にいたり、庭上を見るに罪人ども幾千人と云数をしらず。をそろしき事限り無し。爰に比丘一人来現ありて、閻王に向て曰く、此男我に有縁の者なり。今度は先ず娑婆に皈し給へとの玉へば、冥官、往復に及ばず速やかに免れぬ。彼の男あまり喜ばしく思ひ比丘に対して上の意趣を問ひ奉れば、比丘の曰、我は地蔵菩薩也。我百千の方便を以て衆生を化す。無邊身を現じて有情を度す。されば近江の州、湖水の邊に化して亀となって群類を利せんとせしに、漁翁の為に害せらむとせし時、汝財を捨て我が命を助たり。今其の善種によりて此の苦罰を免を得ることを為(なさしむ)。娑婆に皈りて必ず諸悪莫作等云々。爰に二十餘の女人を怖しき者ども二人して引き立て来る。彼の男、女人に問ふ、何人ぞ、女房泣く泣く答て云く、吾は筑前の國宗像郡の貫主の女(むすめ)なり、と云て泣き沈みけり。彼男、菩薩に向て云く、伏して願はくは我が命にかへて此の女を𦾔郡にかへし給はれ、我は既に年老たり、假命よみがへりたればとて幾程の齢か経るべきやと云ば、地蔵の言はく、汝慈意涙を以て二人共に皈すべしと王宮に至りて宣べ給へば、即ち許されて同時に蘇生してあると冥途物語しければ聞く者涕泣しけり。彼の男筑前に下りて尋るに其の女に対面して語るに一契を合わせたるが如く、聞く人感涙して其の国民専ら地蔵尊を信じけるなん。

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