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福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

観自在菩薩冥應集、連體。巻4/6・12/33

2025-05-19 | 先祖供養

観自在菩薩冥應集、連體。巻4/6・12/33

十二猫神の妖怪幷野干の事

貞享年中に備前岡山の家中に猫神とて小さき祠あり。何れの人の祝祭れりと云事を知らず。其の隣の武士、鳩を飼て幾番もありしに或る夜何なる獣やらん来たりて捕り食ふ。主人忿って伺ひ見れども其の疾き事飛ぶが如し。人の眠れるときを待ちて来たりて捕れば何ともすべきやうなし。一人の武士あり、血気の勇者なり。彼の獣の来たる處に罠をかけて傍に息を静めて相待つ程に案の如く夜半過ぎになにやらん黒き犬ほどのもの走り来て罠にかかるを得たりやおうと捉へて散々に打ち即ち殺すべく思へども、生け捕りにしたるを諸人に見せばやと即ち嚢に入れて麻縄にて重々に縛り上に石臼などを置きて夜の明けるを待つ。朋輩五七人を呼びて内々の曲者を昨晩捉へたり、此れを見て酒飲みたべとて嚢より出し見れば、古き猫の大さ狗ばかりなるなり。鉄砲の筒を差し出すに鐵を嚙む事木の如し。恐ろしと云ふばかりなし。即ち刺し殺して薦に包み夜中に隣の町屋敷へ塀越しに擲げ棄てぬ。町の人夙におきて見れば何やらん薦に包みたる物あり。怪しみ見れば猫酋(ねこまた)を殺したるなり。恐れて大河に流しつ。さて二三日を経て彼の町人の男子に猫神託して種々に口走り、我畜生なりといえども既に猫神と祝はれたる者なり。然るを汝我が屍を葬らず河に流したる事奇怪なり取り殺すべし、と云ふ。親類共驚き集まりて曰く、汝を殺したる武士こそ汝が敵なれ、罪も無き者に取り付いて悩ます事誠に道理を辨へぬ畜生よと云へば、されば我も怨みには思へども我を生け捕りて殺す程の武勇なる人なれば恐ろしくて中々寄り付く事を得ずと云ふ。依て河辺を遍く尋ねければ其の屍ありしを取りて埋めければ怨霊も止みけり。此の事を彼の武士傳聞きて猫神の社を壊ち見たれば中には多く鳩の羽共ありしとなり。即ち社を壊し捨てければ再び祟りもなかりけり。是邪神を故無くして祭れば却って祟りを受る証拠なり。

又元禄の初め江戸の或る諸侯の邸宅に野干人に託して種々の好みを云ひければ社を立てて稲荷明神と祝ふべしとて既に社を立て玉ひぬ。然れば社粗相にて板に節穴ありて足入り住しがたしと云。時に或る真言の阿闍梨を請じて如何すべきと御尋ねありし時、彼の僧の曰く、社を壊ち玉へ、我試みに静めんとて右手には利剣を持し口には大元帥の秘呪(ノウボウタリツタボリツハラボリツ、シャキンメイシャキンメイ、タラサンダンオエンビソワカ)を唱て大に野干を呵して曰く、汝は畜生の中にも極めて卑賎の小獣なり。今宿福深厚の大人に対して種々の好み事を云事極めて奇怪なり。社があればこそ我儘も云へ、向後は永く此の屋敷には住せしめじ。早く出去るべしと大に叱って社二つ即ち壊捨てられければ其の後彼の屋敷に永く野干の祟りなかりけり。野干は下劣の畜生なれば武士貴人高僧等には託する事を得ず甚だ恐るるものなり。童僕女人には多く著くものなり。

又ある国に威勢盛んなる出頭人(主君の側に仕える者)あり。内外に薫杓して手を炙らば熱かるべき勢なり。彼の武士多く人を具して田地を見回りけるに僕隷或る處を通りければ野干快く眠りて居たり。此の僕大なる石を傍に擲て眠りを驚かしければ恐れてコンコンと鳴いて逃げ去りぬ。其の夜より此の僕に取り付いて口走るやう、中々憎き奴かな、我快よく黒憩(ひるね)して居るを驚かす。我は謬て左源太様かと思ひて逃げたるなり。しかるに己が分として慮外なりとて悩ましけり。是も威勢ある武士を恐れたるなり。是例多ければくわしく記せず。

 

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