アルチュール・オネゲル(Arthur Honegger/1892~1955)はミヨー、プーランク、オーリック、デュレ、そして紅一点タイユフェールといわゆる「フランス6人組」を結成し反印象主義を推し進めユニークな作曲活動をした人である。彼は交響曲を5曲作曲しているがこの第3番は「典礼風」あるいは「礼拝」とも呼ばれている。作曲は1945年から46年になされておりオーケストラ・スコアには第3番という表記はなく<Symphonie Liturgique/典礼風交響曲>とある。これは各楽章の標題が典礼音楽ーすなわち「レクイエム」から着想されているためである。第1楽章「怒りの日ーDies irae」、第2楽章「深き淵より我叫びぬーDe profundis clamavi」、第3楽章「我らに平和を与え給えーDona nobis pacem」の3部構成になっている。とは言え「グレゴリオ聖歌」のような典礼旋律は使用されてないのも特徴の一つである。熱心なカトリック信者のオネゲルだから戦争の痛手からの脱却と平和を祈願してこのような作品が作曲できたのだと思う。私の愛聴盤は次の2つである。一つはエルネスト・アンセルメが晩年手兵のスイス・ロマンド管弦楽団と入れた1968年録音(写真左)とミシェル・プラッソンが手兵トゥールーズ・キャピトール管弦楽団と1977年から78年にかけて録音した盤である。(写真右/こちらは交響曲全集で全5曲と交響的断章「機関車パシフィック231」も収録されている。どちらも心に強く訴えかけてくる名演である。余談だがプラッソン盤は彼が2005年パリ管弦楽団と来日した折、演奏会終了後サインを入れてもらったものである。