私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

ロシア・メロディア原盤のフルトヴェングラー (1)

2008-12-07 21:34:51 | 交響曲
 今から約20年近く前、日本からの強力な要請により巨匠ウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)の戦時中(1942年~45年)の幻のライヴ録音と言われていた旧ベルリン・フィルハーモニーでの演奏会録音のレコードがロシア・メロディア直輸入盤で限定発売されたことがある。ドイツのレコード録音技術は他国と比較して昔からすぐれておりこの1940年代においては以前カラヤンの1944年のブルックナー第8番で紹介したようにすでにオリジナル・ステレオの実験的録音がすでに行われていたほどである。当時のベルリンの帝国放送局は最新鋭の録音機材を用いてフルトヴェングラーとベルリン・フィルの定期演奏会を録音していたようである。録音は全てモノラルながら大変優れたものであった。しかしながら、1945年ベルリンを占領したソ連軍は帝国放送局の放送・録音機材・録音テープ等を没収し自国へ持ち帰った。その中にフルトヴェングラーの放送用テープが含まれていたのである。これらは長い間門外不出とされていた。その間海賊盤やコピーされたテープでのレコード化はあったがいずれもオリジナル・マスターテープによるものではなかったのである。ようやく1990年代に入り「鉄のカーテン」もベルリンの壁崩壊とともに緩みメロデイアのテープ保管庫に保存されていたマスターテープが日の目を見たのである。我々レコード愛好家にとって大変エポック・メーキングなことであった。私もソヴィエト連邦崩壊直後のロシアを訪れたことがあるがその変化は驚くべきものがあった。写真撮影もほとんどOKというそれまではとてもあり得なかった事が現実になったのである。そこでこれらのレコードの中で私がちょっと残念で気になる1枚があるので紹介したい。それはフルトヴェングラーがほとんどとりあげなかったブルックナー交響曲第6番イ長調である。私の手元の資料「ウィルヘルム・フルトヴェングラーとベルリン・フィル演奏記録ー1922~1954」(写真)を見てもこのレコード=1943年11月13日、16日の演奏会(2回)のみの記録である。ただしこの録音も第1楽章Maestosoが欠落し第2楽章からの収録である。誠に残念なことである。なぜ第1楽章が欠落したかは謎であるがおそらく録音に失敗したか紛失したかであろう。演奏は特に第2楽章のAdagioは何度聴いてもすばらしいの一語につきる。他に第6番の録音が存在しないので大変貴重な録音資料になる。この交響曲はメジャーな第5番と第7番にはさまれ地味で素朴な作品ではあるがブルックナーが一度も改訂をしなかった作品でもある。