私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

オネゲルの交響曲第3番「典礼風」

2008-12-24 14:46:05 | 交響曲
 アルチュール・オネゲル(Arthur Honegger/1892~1955)はミヨー、プーランク、オーリック、デュレ、そして紅一点タイユフェールといわゆる「フランス6人組」を結成し反印象主義を推し進めユニークな作曲活動をした人である。彼は交響曲を5曲作曲しているがこの第3番は「典礼風」あるいは「礼拝」とも呼ばれている。作曲は1945年から46年になされておりオーケストラ・スコアには第3番という表記はなく<Symphonie Liturgique/典礼風交響曲>とある。これは各楽章の標題が典礼音楽ーすなわち「レクイエム」から着想されているためである。第1楽章「怒りの日ーDies irae」、第2楽章「深き淵より我叫びぬーDe profundis clamavi」、第3楽章「我らに平和を与え給えーDona nobis pacem」の3部構成になっている。とは言え「グレゴリオ聖歌」のような典礼旋律は使用されてないのも特徴の一つである。熱心なカトリック信者のオネゲルだから戦争の痛手からの脱却と平和を祈願してこのような作品が作曲できたのだと思う。私の愛聴盤は次の2つである。一つはエルネスト・アンセルメが晩年手兵のスイス・ロマンド管弦楽団と入れた1968年録音(写真左)とミシェル・プラッソンが手兵トゥールーズ・キャピトール管弦楽団と1977年から78年にかけて録音した盤である。(写真右/こちらは交響曲全集で全5曲と交響的断章「機関車パシフィック231」も収録されている。どちらも心に強く訴えかけてくる名演である。余談だがプラッソン盤は彼が2005年パリ管弦楽団と来日した折、演奏会終了後サインを入れてもらったものである。
 

私の好きなオぺラ ~(5) ワーグナー 楽劇「ニーベルングの指環」全4部作

2008-12-23 20:06:59 | オペラ
 1876年8月、この超大作楽劇「ニーベルングの指環」全4部作がワーグナー念願のバイロイト祝祭劇場の杮落とし公演として彼自身の演出、ハンス・リヒターの指揮で行われた。序夜「ラインの黄金」、第一夜「ワルキューレ」、第ニ夜「ジークフリート」、第三夜「神々の黄昏」である。各楽劇の単独の公演は別にして4演目が通しで演じられるのはこの劇場の杮落としが初演となった。私はこの劇場に出向いたことはあるがチケット入手が困難なこともありまだ生の公演を鑑賞するチャンスに恵まれてない。また近い将来「バイロイト詣で」を実現したいと思っている。悔しいので2002年初秋、久しぶりに祝祭劇場を訪問した際「音楽祭公式プログラム」を劇場前の出店で購入した。(写真右)
 前段が少々長くなったが私のこの作品の愛聴盤はゲオルグ・ショルティ指揮ウィーン・フィル他(Decca/RING-1写真左)とヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル他(DG/写真中央)である。ショルティ盤は1958年から1965年にかけてスタジオ録音されたレコード史上初の全曲盤でDeccaの名プロデュサージョン・カルショウのすばらしいレコーデイング・テクニックによりステレオ効果抜群のサウンドが楽しめ歌手陣の豪華さも注目される盤である。一方のカラヤン盤は1966年から1969年にかけてベルリン・イエス・キリスト教会で録音されたものでカラヤンの繊細な響きが伝わる演奏でショルティ盤とまた一味違う。またカラヤンはほぼ時期を同じくして彼が始めたザルツブルク・イースター・フェスティヴァルでこの4部作を上演している。







チャイコフスキーのメルヘンの世界~舞踊音楽「くるみ割り人形」

2008-12-22 14:13:06 | 管弦楽曲

 今年もあとわずか・・・あさってはクリスマス・イヴ。クリスマスに因んだ曲といえばチャイコフスキーの舞踊音楽「くるみ割り人形」を思い浮かべる。この作品は彼の3つの舞踊音楽作品の最後(1892)に作曲された。出典はドイツの小説家ホフマンの童話「くるみ割り人形と二十日鼠の物語」からとられている。(台本はデュマがフランス語訳したものをプティパが仕立て上げる)物語はクララがクリスマス・イヴにプレゼントしてもらった軍人の形をしたくるみ割り人形が兄フリッツのいたずらでこわれてしまうところから始まる。その晩クララは鼠の大群がやって来てくるみ割り人形率いる鉛の兵隊が戦う夢を見る。くるみ割り人形は王子の姿に変身し彼女を王女としてお菓子の国へ連れて行く・・・なんともメルヘンチックな世界である。まさにクリスマスの夜に聴くピッタリの音楽だ。
 この作品の名盤は数多くあるがその中でも私の愛聴盤は組曲ならカラヤン/ベルリンフィル盤(1966年録音/写真左)、全曲盤ならゲルギエフ/キーロフ歌劇場管弦楽団盤、全曲からの抜粋盤だがロジェストヴェンスキー/ボリショイ劇場管弦楽団盤もなかなかすばらしい演奏を聴かせくれる。(写真右)


フィルハーモニア台湾~自主制作CDから

2008-12-21 10:28:12 | レコード音楽ジャーナリズム
 今年の春、昨年(2007)のPMFフェスティヴァル参加に引き続き台湾の代表するオーケストラ、フィルハーモニア台湾(国家交響楽団ーNSO)が「熱狂の日ーLa Folle Journée au Japon)に出演のため再来日した。私も演奏の評判を聴き5月2日の横浜公演に足を運んだ。会場は横浜みなとみらい大ホールで当日のプログラムはベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61(Vn.ナイユアン・フー)、シューベルト/交響曲第8番ハ長調D.944「ザ・グレート」、指揮は元ウィーン・フィルのヴァイオリン奏者でもあったヨハネス・ヴィルトナーである。ソリストのフーは1985年ベルギーのエリザーベート王妃国際音楽コンクールの優勝実績の経歴を持つ奏者だけあって質の高い演奏を披露した。プログラムの最後を飾ったシューベルトも堂々とした演奏でよかったと思う。さて今回紹介するCDはこのオーケストラ自主制作CDで当日会場で求めたもので曲目はマーラーの交響曲第4番ト長調、同:交響曲第5番から第4楽章「アダージェット」、ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調の2枚組でデジパック仕様である。指揮はこの楽団の首席客演薬演指揮者のウェンピン・チェン録音は2005~06年シーズンのライヴ収録でなかなかの演奏である。特にショスタコヴィーチの演奏はこの作品が持つ戦争の悲劇性ー重々しい内に秘めた情感がこめられた演奏である。録音もすばらしくステレオ効果も満喫できる。こうした普段日本のレコード音楽ジャーナリズムにあまり上らない演奏を発見できるのもコレクターの私にとっての楽しみの一つでもある。

カラヤンのレスピーギ「ローマの噴水」・「ローマの松」

2008-12-20 13:43:23 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヘルベルト・フォン・カラヤンはオットリーノ・レスピーギ(Ottorino Respighi/1879~1935)傑作・交響詩「ローマ三部作」のうち「ローマの噴水(1916)」をベルリン・フィルと1977年、「ローマの松(1925)」をフィルハーモニア管弦楽団と1958年、ベルリン・フィルと1977年に録音している。残念ながら最後の「ローマの祭り(1928)」の録音はない。レスピーギは有名なサンタ・チェチリーア音楽院の教授でもあった彼のこれらの作品は旋律美と色彩感豊かなオーケストレーションが聴きどころでまさにカラヤンに打ってつけの作品ではないかと思う。各作品は永遠の都ローマの情景描写を音楽に表現したものでローマを訪れた人なら目をつぶって聴けばその標題の情景が頭に浮かんでくるはずである。カラヤンの上品な作品に対するアプローチが聴き手を古都ローマに誘う。また「ローマの松」は1984年10月、8回目のベルリン・フィルとの来日公演のプログラムにも取り上げている。大阪公演の演奏が映像化されているが私は10月21日の東京文化会館の公演を生で実感した。終曲、「アッピア街道の松」で執政官の軍隊が行進してくるクライマックスではベルリン・フィルの強烈な響きに圧倒させられた。(写真はカラヤン/ベルリン・フィル盤(1977年DG盤と1984年来日公演プログラム)
 

カール・ベーム/ウィーン・フィル・伝説の東京ライヴ1975

2008-12-19 16:37:27 | 伝説の名盤
 当時、私がカール・ベーム(1894~1981)の生演奏に接するのは1963年のベルリン・ドイツ・オペラ来日以来12年ぶりの事であった。この1975年はNHKが放送開始50周年を記念して巨匠カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を招聘した。ベームはこの時NHKホールで7回指揮台に立った。私は3月22日、23日の2日間この演奏会に胸を躍らせながら足を運んだ。当日のプログラムは22日ーベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番作品72a,ストラヴィンスキー:舞踊組曲「火の鳥」ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68 23日ーシューベルト・プログラムでベーム得意の交響曲第7(8)番ロ短調「未完成」・交響曲第8(9)番ハ長調であった。演奏は今さら言うまでもなくすばらしいの一言で特にブラームスの交響曲第1番は強烈な印象が今も私の心に残っている。またストラヴィンスキーの舞踊組曲「火の鳥」はベームのレパトリーとしては珍しく私のコレクションでは過去に1971年にベルリン・フィルと演奏した(1971年5月14日/ベルリン・フィルハーモニー)FMエア・チェックテープがあるのみである。(1971年10月10日NHK FM放送)
 この伝説の東京ライヴは日本国内限定のレコード化がされ後にCD化もされた。(写真、右は当時のプログラム)これらは大変貴重な記録であると同時に後世に残る伝説の名盤でもある。

FMエア・チェックから生まれた名演 - (5)

2008-12-18 14:02:51 | FMエア・チェック
 「FMエア・チェックから生まれた名演」の第5回はエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード(現在サンクトペルブルグ)・フィルハーモニー交響楽団の演奏会ー1980年と1983年の演奏会ライヴからそれぞれ彼十八場番のチャイコフスキー交響曲第5番ホ短調作品64とショスタコーヴィチ交響曲第5番ニ短調作品47を選んでみた。私の記録によれば1988年3月24日東京FMでオン・エアされたものだがチャイコフスキーが1980年8月14日、ショスタコーヴィチが1983年5月26日レニングラード・フィルハーモニーで演奏されたものだ。テープの提供が「ソ連テレビ・ラジオ国家委員会」とあるのでいかにも当時のソビエトらしい。ムラヴィンスキーの演奏のコンセプトは早めのテンポで押しすすめ極端に強弱アクセントをつける個性的なのが特徴でこの演奏も例外ではない。彼自身は冷静沈着なのだが聴き手を興奮させその音楽の世界に誘いこんでしまう。チャイコフスキーのこの演奏で言えばフィナーレのコーダの部分は圧巻である。
 一方ショスタコーヴィチの第5番はムラヴィンスキー自身がこのオーケストラで1937年ロシア革命20周年の年に初演した作品だけに実に文句のつけどころがない凄い演奏である。私も彼が1973年5月初来日した際東京文化会館で同曲を生で聴いたが当時の興奮・感動を忘れられない。このテープの演奏でも特に第3楽章の最弱音と最強音の対比やハープ、チェレスタの音が美しい。フィナーレ第4楽章では1973年の東京でのライヴと同様にティンパニーをはじめとする打楽器群が目の覚めるような音で早いテンポの中迫ってくる。まちがいなく聴衆を圧倒する名演中の名演といってもよい貴重な録音だ。

フリッツ・ライナー/シカゴ響 R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

2008-12-17 22:07:26 | 管弦楽曲
 昨日に引き続きもう一つフリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団の名盤リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss/1864~1949)交響詩「英雄の生涯(Ein Heldenleben)」作品40を紹介したい。この録音は1954年3月シカゴ・オーケストラホールでされたものである。ライナー、シカゴ交響楽団音楽監督就任1年目の録音で同時期にもう一つの傑作「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30も録音されている。しかもどちらもオリジナル・ステレオ録音である。西欧諸国でステレオ録音が一般的になったのは1958年以降のことだからこれらの録音はステレオ最初期で画期的なことであったと言える。当時のRCAの録音技術のすばらしさを改めて感じさせるサウンドで色彩豊かなシュトラウスの世界が広がる。ライナーは元来R.シュトラウスを得意としておりどちらかといえば鋭角的な解釈で聴き手に迫って来る。聴き所は「英雄の伴侶」ヴァイオリン・ソロが美しく響く。続くこの曲のクライマックスでもある「英雄の戦闘」では金管楽器、打楽器群のめざましい活躍がステレオ効果を上げている。「英雄の業績」では作曲者の過去の作品ー「ドン・キホーテ」、「ドン・ファン」、「ティル・オイレンシュピーゲル」等の断片が次々と現れ英雄の業績を回想する。つまり「英雄」とはR.シュトラウス自身を指している。ライナーは実にたくみに手兵シカゴ響のサウンドを引きだしている。終曲の「英雄の引退」のコーダは静かに終わるがこの余韻が心に残る名演だ。

フリッツ・ライナー/シカゴ響の「シェラザード」

2008-12-16 21:15:26 | 管弦楽曲
 今日は「伝説の名盤」の2回目としてシカゴ交響楽団の「黄金期」を築き上げたハンガリーの名指揮者フリッツ・ライナー(Fritz Reiner/1888~1963)のリムスキー=コルサコフ(Rimsky-Korsakov/1844~1908)の傑作、交響組曲「シェラザード」作品35を紹介したい。この作品は「千一夜物語ーアラビアン・ナイト」の絵巻物の世界を音楽に仕立てあげたものである。曲は4つの楽章それぞれ順に「海とシンドバッドの船」、「カランダール王子の物語」、「若い王子と王女」、「バグダッドの祭りー海、船は青銅の騎士の立つ岩で難破、終曲」とタイトルが付されているが「千一夜物語」のどの話をさすのかは定かではない。作曲年代は偶然にも指揮者ライナーが生まれた年1888年である。ヴァイオリン・ソロの「シェラザード」のモティーフが美しくこのレコードでは当時のコンサート・マスター=シドニー・ハースのソロが光る。1960年2月シカゴ・オーケストラ・ホールの録音だがRVCのリマスター技術で時代を感じさせないすばらしいサウンドで甦る。特に後半の第3楽章・4楽章は絶品である。この作品のエキゾチックでオリエンタル的雰囲気をライナーの巧みな棒さばきで描きだした名演である。

カラヤンの巧さが光る管弦楽曲集

2008-12-15 16:12:26 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヘルベルト・フォン・カラヤンの巧さが光る「管弦楽曲名演集」を1枚紹介したい。それは彼が1967年にベルリン・フィルと録音したリストとスメタナの管弦楽曲集である。(写真-日本グラモフォンMG2048)収録曲はリスト(Franz Liszt/1811~1886)/交響詩「レ・プレリュード(前奏曲)」(Les Préludes)、「ハンガリー狂詩曲第2番」(Ungarische Rhapsodie Nr.2),スメタナ(Smetana/1824~1884)連作交響詩「わが祖国」から第1曲「高い城」と第2曲「モルダウ」の4曲である。カラヤンは何を振ってもそつなくこなしてしまう指揮者だったが特にこのような作品は非常に彼の繊細さが光り巧かった。リストの「前奏曲」は名演中の名演といっても過言ではないと思う。彼はこの曲を3回(フィルハーモニア管弦楽団(1958)と1回、ベルリン・フィルとこの録音も入れて2回(1967/1983)録音しているが私はこの67年の演奏が好きである。また、ハンガリー狂詩曲は元来原曲はピアノ曲だが第2番は管弦楽編曲版の方がポピュラーになっているかもしれない。スメタナの「モルダウ」はカラヤンが特にお気に入りだったらしく実にこの録音も含めてベルリン・フィルで5回、ウィーン・フィルで1回、計6回レコーデイングしている。残念ながら連作交響詩「わが祖国」全曲の録音はされなかった。「高い城」、「モルダウ」と聴いていくと次が聴きたくなる気分になるのは私だけではないだろう。このLPのジャケットも私の気にいっている1枚である。