mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

デジタルとアナログの陥穽

2021-09-02 07:04:42 | 日記

 昨日(9/1)の新聞の埼玉版に「12日間の安否確認なく死亡」の記事が載った。
 先月11日にコロナウィルスに感染が判明。軽症と判断され経過観察。ところが27日に119番があり、それを通じて死亡が確認されたという。基礎疾患のある60歳男性。妻も感染して自宅療養していたそうだ。その記事からわかったこと。
(1)保健所は自宅療養者の「健康観察」を支援センターに委託していること。連絡が取れないときには保健所に連絡。保健所が安否確認をするという。
(2)支援センターは「連絡」を「自動音声による電話」で行っていること。
(3)健康観察の対象者は一日9000件に上り、50人の職員で対応している。
(4)同様のケースで死亡していた高齢者がほかにもいた。

 保健所が手一杯ということは、1年以上前から聞いてはいた。支援センターへ「健康観察」を委託するってことも致し方ないだろうとは思う。だが、1年前に較べると感染者数は十倍を超えている。だから支援センターを設けたのであろうが、「連絡が取れなかったときは、保健所に知らせて、保健所が安否確認をする」という。これは、どういうことだ?
(1)では、支援センターは、責任ある仕事のインセンティブを持てない。安否確認というのを、医療的な診断を含むと考えると、医療素人の支援センターには任せられないというのも(理屈としては)わからないでもないが、軽症の状態が続いているかどうかを「確認する」と考えると、支援センターに任せることができる。ただ単に「連絡がつくかどうか」だけではなく、電話に出る状態が続いているかどうかだけでも、「責任」は大きく生じる。だが、責任を負っているという感覚は、支援センターにはなかった。
 それを明かすのが、(2)だ。「自動音声」というのは、近頃の「世論調査」などで用いられている電話手法であろう。私は機械音だとわかるとすぐに電話を切ってしまう。「失礼だ」と感じるからだ。アナログ育ちの世代には、慇懃無礼な機械音を聞くと、馬鹿に済んじゃないよと思ってしまう。それに機械は、「連絡が取れない」という事実だけを理解するが、その出られない電話口の先にある事態に想像が及ばない。まず、これで「連絡している」と考えている支援センター自体が、「責任」を感じていない。もしAIに「連絡が取れないのが二日続いた」という設定でもしてアラームが鳴るようにしていれば、少しは変わるかもしれないが、これだけで、自宅療養者は、放置されているとわかる。
 一週間ほど連絡がつかなくて、「看護師が直接電話」と記事は書いている。「本来ならば、直接電話に出ない場合は、保健所に連絡し、保健所の職員が直接自宅を訪れて安否確認」と手順を考えていたらしい。
 モンダイはここだ。ただでさえ忙しい保健所に「連絡がつかないと知らせる」ことが、できるかどうか。支援センターが責任を持っていれば、「状態確認」はできる。そうとなると、「責任」が生じるから、支援センターが自ら出向いて「確認」するだろう。だが、「連絡が取れない」について、「二重のチェックができていなかった」と弁明しているとあるが、そんなことに二重のチェックということ自体に、責任感覚のなさが現れている。責任がないところに矜持は生まれない。機械的に電話をしたという「記録」を残すのが仕事ということになる。自宅療養は、見放されている。
 加えて、支援センターの仕事の多さだ。50人の職員で一日に9千件の電話をするという。一人一日に180件の電話。勤務時間を8時間フル稼働と考えても、平均して一人当たり約3分。電話が鳴る。病人が受話器を取るまでに1分かかってもおかしくない。
「様子はいかがですか?」
「はい、ありがとうございます。なんとか……」
「熱は? パルスオキシメーターの表示はいくつになっていますか?」
「熱は……、オキシメータは、今ちょっと調べてみますね……」
「食事はとれていますか? 食べ物はありますか? 必要なものがあれば教えてください」
「食欲がありません」
 とやったら、普通に自宅にいる人だって、3分はかかる。まして職員も、昼食は摂るし、トイレにも行く。8時間ぶっ通しで電話機に張り付いているわけにはいかない。そういうわけで、自動音声の導入なのであろう。だが、若い人はともかく、年寄りはアナログ育ち。近頃はやりのカスタマーセンターに電話をするだけで、10分は待たされる。用件が済むまでに20分から30分かかることもある。アナログ育ちは、そこまで機械に向き合えない。
 総じていえば、医療は完璧に崩壊している。ワクチン接種も効かないと名古屋の市長も証明している。つまり、コロナ感染の自己防衛に失敗したら、運を天に任せて祈るしかないのが、現状だというのが、この記事の教えていることだ。
 コロナ感染について「明るい日が見える」とこの国の宰相は言ったそうだ。何を見てんでしょうね、この人は。