-凸凹帖-

写真 奥野和彦

その3 三角顔

2021-09-22 21:39:52 | 写真


なんだかバタバタっと音がして後頭部に
何か飛んできてぶつかった。
ショウリョウバッタかイナゴだろうと思って
手を伸ばしたら、それから逃れるように足元に
舞い降りたのはカマキリだった。
嫌なら飛べるんだから、遠くに逃げればいいのに
こうしていたずらされたそうな近いところに降りる。
そこにはもう一種類のねり餌「九ちゃん」が入っているのだ。
邪魔をしないでおくれ。すぐにいなくなった。



九ちゃんはハリに付けると言うよりは
ビンドウに入れて居留魚チェックのために用意した。
足元の水の中にビンドウを沈めて
どんな魚がいるか知りたい。
釣りをしながら、あとでそれを上げる楽しみがある。
この夏、体長8センチほどのナマズを拾って来て飼っている。
これがなかなかの神経質でやっと慣れたが
もう体の大きさは来た時の2倍にはなっている。
固形の餌を食べないので来てすぐの時には
餌用のメダカをやったら食べたけど
餌メダカはコストがかかる上に生かしておくのが面倒なので
冷凍赤虫を与えるようになったらそればかり食べるようになった。
赤虫のブロック1個が大きすぎて成長が早いのだ。

釣りに来て足元にはメダカ(カダヤシ)が水面でピョコピョコしていて
これを掬って帰れば冷凍赤虫も節約できると思って
網で掬っておいた。
その下にいるのが柿の種サイズの真鮒の子だ。
ビンドウの中に小エビでも入ればそれでも良い。

さて、水面に視線を戻すと
どこでどうなったのかカマキリが溺れている。
どう見ても水浴びを楽しんでいるようには見えず
放っておけば死ぬだろう。
見殺しにすることも出来ないので
竿をひっくり返しに持ち直してカマキリに捕まらせて
カエルが潜った辺りに引き上げてやった。

ジタバタして疲れただろう。
羽の中も濡れただろう。
少しだけ羽を開いて乾かしている様子。
そのままじっとしている。
昆虫に脳は無い。
溺れた事や、敵であるはずのニンゲンが水から引き上げた事
助けるとか、助けられたとかの認識があるのか
相変わらずの三角顔でこっちを見て
いつもの、何もかも気に入らぬような
何もかもをそのカマで引き裂いてやるぞといった顔つきで
羽を半開きにして顔だけこっちに向けて
警戒している、のか感謝ぐらいしているのか。

その後左のコンクリートの壁をよじ登り
道に上がったぐらいまでは視線に入っていたが。
ビンドウには、やはり柿の種が15匹ぐらいとクチボソが5、6匹
タナゴもエビもいなかった。
バケツの中のメダカだけ残して
ビンドウの魚も水路に戻す。

3時過ぎには降り出すと言っていた雨は4時になっても
まだ降らない。
イタチくんは来なかった。