-凸凹帖-

写真 奥野和彦

第1話 チビでもタイショウ

2021-09-17 21:41:37 | 写真


9月の田んぼは大方刈り入れも済んで
この前までアブラゼミがしがみ付いて鳴いていた
桜の木からはもう葉っぱが落ちて
アスファルトの上で乾いた音を立てて
風に舞っている。

久しぶりに釣りでも行って気分転換でもして来たら
と奥さんが言うので
禁漁間際の渓流かと思ったけれど
そこまではお金かけなくていいです、と。
何年ぶりの「イタチくんの水路」
ここで草むらに紛れ込んで釣りをしていると
いろいろな事に出会える。
生きているのは人ばかりでは無く
生き物はそれぞれに生きるべき道を生きている。

車にお茶をとりに戻る、カメラを出しに戻る
コンビニで買ったおにぎりを取りに戻る。
コンビニの袋のガサガサした音を聞くと
イタチがやってくる時があったが
今、コンビニで袋はもらわない。
イタチはどうしているだろうか。今日は現れるだろうか。

座り込んで「柿の種」と呼ばれる極小のフナの子供を釣り続けて
何度目かに車に戻った時に、ふと視線を感じたので
頭の上を見るとアオダイショウの子が
枝の先から首を伸ばしてこちらを見ている。
慌てて二眼レフカメラを出して構えるけれど
角度が悪いのでさらに車から脚立を出して
その上に立って撮る。
かつて、家の近くにあったちょっとした茂みに
アオダイショウがいた事があって
よく木の枝に登って休んでいるのかじっとしているのを
子供と一緒に見た事がある。
写真にも撮ってそれは気に入っているので
来月の展示にも登場する予定だけれど
今日撮った写真が良ければそっちに変わるかもしれない。

近づいたら、さすがにもっと上の方に
登って逃げ始めたので
ちょっと尻尾の方をつまんでみたら
イヤイヤをする様に首を2、3度左右に振って
さらに速いスピードで枝から枝へ渡って離れて行った。