英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『すべてがFになる』 第9話&最終話「有限と微小のパン」

2014-12-24 23:19:47 | ドラマ・映画
「これは夢ではないですよね。“現実”ってなんでしょうか?」(萌絵)
「“現実とは何か?”…そう考えた瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だよ。
 そもそも、そんなものは存在しない」
(犀川)
「現実なんてものに意味はないってことですか?
 真賀田博士も同じようなこと、おっしゃっていました。
 似ていますね、先生と博士は」
(萌絵)


 持って回った犀川の言い方なので分かりにくいが、
「現実は自分が思う以上にあやふやである」
さらに言い換えると
「(自分が見た)事実は、必ずしも真実ではない(虚構であることもある)」

 これが今回のテーマであり、
“不可能な殺人”を、虚構な事実を現実(真実)だと思わせることによって成立させたのだった。「まさに僕らは夢を見させられていたということか」(by犀川)
 その誤認の手段が壮大だった。
①地下通路と秘密のエレベーターとそっくりな二つの教会の部屋
②偽の県警、ホテルや施設の従業員総出の芝居
③ホログラムやバーチャル空間
 ①は推理物好きにとってはすぐ思いつくトリック、③のホログラムは真賀田四季が使用したほぼ万能なホログラムだったらなんでも可能となってしまう。②にしても、ほとんど反則技である。
 しかし、これらがうまく融合されていたので、楽しめるものとなっていた。


 残念なのは、塙が計画した壮大なドッキリに秘書・新庄が便乗して実際に殺人を犯してしまい、その上、真賀田四季と萌絵と犀川の三角関係を絡めてしまったため、複雑になり過ぎてしまったこと。
 四季のキャラは魅力的だし、一連の出来事を四季が誘導していた絡ませるのは面白い。
 「萌絵のトラウマを解消させ、萌絵を守ることに縛られていた犀川を開放する」という今回の騒動の四季の動機(目的)も悪くはない。

 四季は「萌絵を救うことは手段で、目的は犀川」と語っていたが、ふたりのために動いたと解釈したい。ふたりをからかうという悪戯心もあって、塙に加担したのだろう。四季は、萌絵と犀川が好きなのである。
(ただ、犀川と四季が浜辺を歩くシーンは良いとしても、犀川が四季の“純粋思考世界”への誘いに乗ってしまうような振りし、萌絵が悲しむという要素は要らない)

 やり過ぎだったのは、新庄が犯した実際の殺人。
 単に、壮大なドッキリ大作戦にした方がスッキリしたのではないだろうか?



 さらに、今話の大きな問題点として、
「両親が飛行機事故で萌絵の目の前で亡くなったことによるトラウマで、死に対して麻痺している」
という設定。

 伯父・西之園が心配し、犀川に萌絵のことを託していたが、萌絵のコナン張りの“出しゃばり捜査”を大目に見るよう視聴者にお願いしているように思えて仕方がなかった。


【その他の感想】
・第二の殺人に関しては、「完全な密室」⇒「秘書・新庄の狂言(死んだふり)」という推論したが、「新庄の自殺」という推論も成り立つ。
・「城田優&鈴木一真の社長・副社長コンビ」は「“いかにも怪しい”強力コンビ」だと、つくづく感じた。
・ドラマ冒頭の回文暗号や、四季の存在を仄めかす暗号などの言葉遊びは、難解すぎるが面白かった。


 いろいろ難点はあったが、トリックそのものは面白かったし、四季のキャラも魅力があり、主役二人のコンビも悪くなく、楽しめたドラマだった。
 


【ストーリー】脚本・黒岩勉
『前編』
 スーツケースを手にした西之園萌絵(武井咲)は、ナノクラフト社が運営する「ユーロパーク」に到着した。パーク内の貸別荘で犀川ゼミの旅行が計画されていたが、大株主である萌絵は前乗りしてナノクラフト社長の塙理生哉(城田優)と食事の約束をしていた。塙は現在のIT業界で一番の成功者と言われる人物で、かつて萌絵との縁談が浮上したこともあった。
 事情を知った儀同世津子(臼田あさ美)は、犀川創平(綾野剛)に萌絵が心配ではないのか、と聞く。

 萌絵を出迎えたのは、塙の秘書の新庄久美子(青山倫子)だった。久美子は萌絵をパーク内のホテルに案内すると、343と部屋番号の記された鍵を渡した。早速、部屋に入った萌絵は、電話の横のメモに書かれた不可思議なメッセージに目を留める。すぐに犀川に電話をし、それが自分の死を予告するものではないか、と話すが、犀川は単なるいたずらだから気にすることはないと答える。
 塙との会食の時間になり、萌絵は久美子とエレベーターに乗り込む。久美子がエレベーターにカードキーを差し込むと、表示パネルにはなかった「B1」のボタンが現われた。地下にナノクラフトの研究施設があるが、その存在を知っているのは社内でも限られた人間だけだ、と久美子は話した。地下に着くと通路を歩き、さらに別のエレベーターで今度は1階に上がる。地上に戻ったと思いきや、エレベーターホールの外に出ると、そこは教会の内部だった。すると、塙が現われて…。


≪第七話 事件のおさらい≫
 滞在中の「ユーロパーク」で女性の悲鳴を聞いた西之園萌絵(武井咲)が教会に駆けつけると、そこにナノクラフト社の新庄久美子(青山倫子)がいて、側には同じく社員の松本卓也(小久保寿人)が倒れていた。久美子によると、松本は天窓を突き破って落ちてきたという。萌絵が見上げると、窓が大きく割れていた。萌絵はすぐにスタッフを呼びに行き戻ってくる。すると、松本の遺体は消えていて、代わりに腕が一本落ちていた。
 警察の取り調べを受けた久美子は、遺体は天窓から引っ張られて行き、そのときに腕が落ちてきたと証言。しかし、その後の調べで窓の外に人がいた形跡や引き上げるために道具が使われた痕跡はなかった。忽然と消えた遺体に納得がいかない萌絵は、警察に教会に通じる秘密のエレベーターがあることを教える。それは、萌絵が久美子に連れられて教会に来たときに使用したものだ。しかし、エレベーターの扉があるべきところに行っても、倉庫があるだけだった。
 真相が知りたい萌絵は、警察とともに、休んでいた久美子を訪ねる。ドアを開けて顔を出した久美子は着替えるから待っていてくれ、とドアを閉めた。そこへ、パークを運営するナノクラフト社の社長・塙理生哉(城田優)と副社長・藤原博(鈴木一真)も久美子に事情を聞こうとやってきた。そのとき、久美子の部屋から悲鳴と争うような音が聞こえた。マスターキーを使って部屋を開けると、久美子が胸部から血を流して倒れていて、警察が死亡を確認した。室内に入った萌絵は、各部屋を確認したが、犯人の姿はなく、すべての窓には内側から鍵がかかっていた。萌絵は、教会のように秘密のエレベーターや隠し扉があるのでは、と警察に訴えるが、聞き入れられない。
 塙と対峙した萌絵は、昨夜、自分が塙に教会で会ったとき、自分は地下の通路を通ってエレベーターに乗って教会に到着したはずだ、と力説。しかし、塙は、萌絵は地上の正面入口から入ってきたと主張する。

 そこへ、萌絵を案じた犀川が現われる。犀川は、これは真賀田四季(早見あかり)が自分たちに用意した問題だと言う。さらに、犀川は今回起きたふたつの殺人の最大の命題は、「物理的に不可能な殺人」であることだと伝えた。
 パークのどこかに四季がいるに違いない、と確信する萌絵は、塙の誘いに応じて社長室を訪ねる。対面した塙に四季のことを訪ねるが、塙ははぐらかし、もしも自分のプライベートなパートナーになってくれれば、教えてもいい、と答える。そんなとき、萌絵の意識が朦朧となり倒れ込む。
 目を覚ました萌絵は教会にいて、そこには四季が立っていた。見上げた萌絵は、天窓のガラスが割れていないことに気づいた。四季は、また人が死ぬと言い…。


『後編』
 西之園萌絵(武井咲)はホテルのベッドで目を覚ますと、ふらつきながら教会へとやってくる。警察の規制線をくぐって見上げた天井のガラスは割れたままだった。
 萌絵は、犀川創平(綾野剛)に会いに行くと、自分は夢を見ているのではない、と確認するようにつぶやいた。
 ホテルに戻った萌絵は、鵜飼大介(戸次重幸)に電話し「ユーロパーク」に真賀田四季(早見あかり)が潜伏しているから捜索要請をしてくれ、と頼む。やがて、鵜飼から連絡を受けた愛知県警の芝池護(小林隆)がやってくる。萌絵は芝池に、自分とともに塙理生哉(城田優)のところへ行き、四季の居場所を聞き出して欲しいと言う。
 萌絵と芝池は、ナノクラフト社で塙と藤原博(鈴木一真)と面会する。萌絵は、自分に睡眠薬を飲ませ四季のいる場所に連れていったはずだ、と塙を問いただすが、塙は萌絵の妄想だと言って取り合わない。

 同じ頃、犀川はホテルの公衆電話から国枝桃子(水沢エレナ)に電話をかけると、他愛もない話をして電話を切る。すると、ほどなくその電話が鳴った。受話器を取った犀川が名乗ると、相手は四季だった。
 塙に相手にされなかった萌絵がロビーに戻ると、藤原がやって来る。藤原は、ナノクラフトを世界一のソフトウェア会社に成長させた塙が、ユーロパークを作ったのは、ここで萌絵に会いたかったからだと話す。さらに、いい物を見せると言って、萌絵を地下へと案内し…。


【萌絵と犀川による事件の推論】
さまざまな不可解な事件が起ったが、事実は「地上の教会に松本卓也(小久保寿人)の遺体があり、その後、萌絵(武井咲)が見たときに消えていた」ということだけ。松本の遺体が天窓を突き破って落ちてきたとか、次に遺体が天窓から出ていき腕が落ちてきた、という新庄久美子(青山倫子)は、ほかの誰も確認していないことから偽証の可能性がある。さらに、久美子が殺害されたのはホテルの密室だった。部屋に犯人は隠れておらず、すべての鍵が内側からかかっていたとなれば、導き出せる答えは、久美子は殺害されていないということだ。久美子の死亡を確認したのは愛知県警の刑事・芝池(小林隆)だが、犀川創平(綾野剛)は、芝池だけでなく、現場にいた警察や鑑識、救急隊員も偽物だったと考えれば、すべての現象に説明がつく、と話した。さまざまな現象は、塙理生哉(城田優)が、萌絵の興味をひくために大勢のスタッフを巻き込んで演じた壮大な芝居だったのだ。

なぜ、松本と藤原博(鈴木一真)は殺されたのか?
 当初の塙の計画では、松本、久美子、藤原の殺害もすべて芝居のはずだった。予定外の行動に出たのは久美子だった。松本に個人的な恨みがあった久美子は、芝居を利用して本当に松本を殺害したのだ。死んでいるはずのない松本が死んでいるのを萌絵に確認されてしまった久美子は、計画を変更。殺害を隠蔽するために、藤原の殺害を思いつき実行に移す。社内の2人の人間が殺害されたと分かれば、塙は事件を隠し通すはずだ、と久美子は踏んだのだ。

真賀田四季(早見あかり)との関係は?
 壮大な殺人の芝居を計画したのは、四季だった。四季は、萌絵の「ユニークな構造を検証するため」だと理由を説明。萌絵は、両親の死亡事故以来、自己防衛の手段として、人の死に対する感情を遮断しているが、心の奥底では死を望んでいる、と四季は分析。その萌絵がどうやってバランスを取っているのかが知りたかったのだという。結果、死の対極に犀川を置くことで、不完全な自分を補おうとしているのだ、と判明したという。

四季は「ユーロパーク」にいたのか?
 ユーロパークに潜伏していると思われた四季だが、実は犀川の妹・儀同世津子(臼田あさ美)の隣人を装い、そこから隔離操作でホログラムとして萌絵や犀川の前に現われていたのだ。事実、四季が前日まで住んでいた部屋には、萌絵と犀川がユーロパークで目にしていたマリア像と食べかけのパンが置かれていた。
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