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英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『ビブリア古書堂の事件手帖』 第9話「チェブラーシュカとなかまたち」

2013-03-11 23:40:54 | ドラマ・映画
≪子どものころに読んだ絵本を、もう一度読みたい≫
そう思って絵本を探す人は、少なくないかもしれません。
記憶の糸を手繰り寄せ、その絵本とまた出会いたいと思うのは、どんな時なのでしょうか?
そして、その思いは…なぜ生まれたのでしょうか?


 今回はすっきりしないと言うより、酷い。
 高坂母娘の仲はどうしてこじれてしまったのだろう?
 意地っ張りで、独りよがりで、一方的で、素直じゃないという点は親子だなあと思う。そういう親子だから、すれ違っていたのだろうけれど、お互いが、この性格を理解して、相手の言動を自分に置き換えて考えるようにすれば、理解しあえる。
 今回、栞子の推理(超能力)により、母の娘を思う気持ちが明らかになっていったが、娘はずっと母の気持ちを理解できずにいただけで(母親のひねくれた表現も問題だが)、母を慕う気持ちはほとんど感じられなかった(晶穂が撮影した親子の写真が母への思慕だったと考えられるが)。
 晶穂がその母の想いを理解し、歩み寄ろうとする言葉を発したのならともかく、
「それなら、なんで今まで…今更だよ。だったら一言聞いてくれればいいじゃない、「何があったの」って。聞きたいことがあるなら、会いに来ればいいじゃない」
 もう少し、晶穂の改心の気持ちが感じられる台詞が欲しかった。
 せめて、栞子から「店の外で待っている」と聞かされた時、店の外に飛び出すくらいのことをしてもいいじゃないのか?母親から店に入ってくるって、段取りとは違うだろう。
 「自分はどうなのよ?母親って言えるの?さんざん人のことを無視してきたのに。あなたがそんなんだから、………だからあたし、怖くなったんじゃない。親子なのに、言いたいことも言えない、そういう娘の気持ち、考えたことあるの?自分の子どもにそういう気持ちさせるなら、初めからあきらめた方がいい。生まない方がいい」(←責任転嫁もいいところだ)
 
========<中略>========

「だったら、自分が思ったようにするべきでしょ!あなた、ずっと、そうしてきたでしょ。ずっと、ひとりだけで、ずっと」
「言われなくてもそうするよ。あたし、産む……絶対、産むから」
「あたしは帰りますから。………(横を向いて)晶穂、今度また家に寄りなさい。これから先のこと、いろいろ話し合わなきゃならないんだから」
泣き崩れる晶穂。
 
 長々と、しょうもない会話だった。実のない内容である。
 彼に妊娠を打ち明けるよう勧めるのは母親の役目だと思う。

 
 晶穂が絵本を探し始めたのは、絵の修行(海外進出)に旅立つ彼に妊娠を打ち明ける決心をつけるため。出産して母親になるが、自分と母の関係を思うと、母親になれるか自信がなかったらしい。
 これもよくわからない。彼に妊娠を打ち明けるのと、母親になる自信というのは、全く次元が違うし、それらのことと絵本の内容もほとんど関係がないように思われる。絵本のテーマが「母と娘」とか「恋愛や結婚」なら、まだ理解ができるけれども。「なかよしの家」を作りたいという気持ちがわずかにかすっているか。

「母と娘だからこそ、分かりあえることもあるんじゃないでしょうか?」
 今回の話は、栞子にこの台詞を言わせるための話としか思えない。

 そもそも、内容の断片しか思い出せないような絵本が、晶穂にとって思い入れのある大切な本だとは思えない。そんな本に自分の決心をゆだねるのはおかしい。しかも、人まかせ。せめて、一番絵本がありそうな実家を探していないなんて、本当に探す気があったのか?絵本が見つからないことを言い訳にして、現実から逃げているにすぎない。
 それに、絵本の正体が栞子によって解明されたが、晶穂が持っていた絵本そのものは見つからなかった。子どものころに大事にしていた本、それにまつわる思い出を求めていたわけでもなく、本に大切な写真を挟んでいたというようなこともないようだ。
 ストーリーもほとんど覚えておらず、本そのものにも愛着や由来があるわけでもない。五浦のもとから突然姿を消し、連絡なしという過去といい、今回の唐突な意味のない依頼、母親との行き違いの様子といい、晶穂は自分本位で身勝手で図々しくて意地っ張りの責任転嫁の現実逃避の女としか思えない。
 

栞子の推理はもう超能力の域
「友だちの小屋という呼び方」「売らない4冊の写真集」「メモ用紙」「犬の名前」「晶穂を思っての母親のひねくれた表現の小言」「コートを脱がず、コーヒーを飲まず、パンを遠ざける晶穂」などから、絵本の正体、晶穂の妊娠、母親の娘を思う行動をズバズバ見通す。……超能力の域である。
 付け加えるなら、あの犬小屋をそのままにしておくのは、娘を思う証拠だろう。


【ストーリー】番組サイトより
 篠川栞子(剛力彩芽)と五浦大輔(AKIRA)は、大輔の勉強のため定休日に古書店巡りをすることを決め、ある日、写真集専門の古書店へやってくる。ギャラリーを併設したその店でふたりが写真を見ていると、写真は好きか、と高坂晶穂(矢田亜希子)が声をかける。予期せず再会したが、晶穂は、大輔の高校の同級生で元恋人だった。大輔は気まずいながらも、栞子に晶穂を紹介。カメラマンをやっている晶穂は、野上司(望月章男)という気鋭のカメラマンと一緒にここで写真展を開いていると説明した。一方の栞子が、祖父の代から古書店を営んでいると話すと、晶穂は「タヌキの絵本」を探してくれと頼む。タイトルや作者は覚えていないが、舞台は外国でタヌキなどさまざまな動物が出てきてみんなで家を建てる話だったという。覚えている限りの内容を話すと、栞子は知っている話のような気がするがそれ以上はわからないと答える。
 後日、晶穂が「ビブリア古書堂」を訪ねてくる。志田肇(高橋克実)がパンを焼き上げたところだったので試食をすすめると、晶穂はそれを押し戻し、今日来たのはほかに思い出したことがあるからだと言った。ほかに、サイとワニ、それから成績の悪い男の子も出てきたと話すが、栞子は思い当たらない。
 行き詰まった晶穂は、あとは実家を探すしかないと言うが、母親(かとうかず子)との関係が悪くできれば会いたくないので、栞子に同行してほしいと頼む。晶穂が本を探すのに特別な理由があると感じた栞子は、それを承諾する。
コメント (3)
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NHK杯準決勝 郷田棋王-羽生三冠 「天才ですね」

2013-03-11 17:18:27 | 将棋
「天才ですね、さすがぁ…。……いや、天才です。やぁ…羽生さんは……昔から天才だとは知ってたんですけどねえ…や、なるほど…天才だ(天才)の詰みですこれは」

 解説の先崎八段の言葉である。
 先崎八段は言葉が立ち、その上、将棋の造りを分かりやすく語ってくれるので、解説者として一流である。さらに、羽生三冠を始めとする森内名人、佐藤九段、郷田棋王らの羽生世代の俊英たちのこと語らせたら右に出る者はいない。当の先崎八段も羽生世代で、「天才」と称されていた。しかし、特に、羽生善治が登場してからは、「元天才」という非常に有難くない呼称をつけられてしまった。
 先崎八段も羽生三冠の才や恐ろしさを感じていたが、表にはストレートに出さず、「俺が一番、羽生善治を理解している」という自負を表しており、将棋関係者もそれを認め、羽生三冠の重要な将棋には、先崎八段に解説を委ねることが多かった。
 しかし、「俺も羽生善治には負けない才がある」と対等な先崎八段のプライドが、解説のマイナスになることが多々あった。羽生三冠の深い読みや高次元の大局観に、先崎八段がついていけないのである。

 昨日の先崎八段は違った。
 棋理に照らし合わせながら、読みを重ね、対局者の指し手を尊重した謙虚な解説であった。
 郷田棋王の剛直な仕掛けに対し、それを斜めに受け流し側面から郷田棋王を揺さぶる羽生三冠。まさにねじり合い。そんな「山あり谷ありの将棋」(先崎八段の言葉)であったが、この日慎重な先崎八段が「先手(郷田棋王)が優勢」と言及した局面で、郷田棋王が決めに行った。
 これが危険だったようで、後手玉は受けなしであるが、先手玉も危ない。第一感は詰みだが、詰ましにいく手段がいくつもあり、どれも詰みそうで、詰まないかもしれない。秒読みの中で読み切るのは困難。
 そして、詰ましに行った。角打ちから入るか、銀打ちから入るかの違いはあったが、先崎八段の詰みの本命に挙げた手順で進み迎えたのがクライマック図。



 詰みがありそうだが、詰み手順が見えない。先崎八段も言葉が泳ぐ。
 羽生三冠も、視力検査のランドルト環(アルファベットのCのような隙間のある輪)を覗きこむように顔をしかめて盤面を凝視している。≪顔をしかめると詰みが見えるのであろうか?≫などと変な突っ込みを入れていたら、秒に追われながら、銀を掴み、8六へ、先手の歩の頭に放りだすようにその銀を置いた!(銀がやや斜めになった)……??!!?!天才図



 15秒後、この手の意味を理解して発したのが冒頭の言葉。
 指し手を解説するより、先崎八段の言葉を紹介するほうが良い。
△8六銀の後
「ほおおおぉぉ銀からですかぁ………銀から……そう…で…す…はっぁなるほど!最後7二に桂が打てると言ってるんだ、や、これはす、凄いことが起きましたね。これは気がつかなかった。天才ですね、流石ぁ…。……いや、天才です。やぁ…羽生さんは……や昔から天才だとは知ってたんですけどねえ……や、なるほど…天才だ、の詰みですこれは」
「やこれ、△8五桂▲8六玉△7四桂と打てるところだから、桂の方が良いって理屈が普通ありえないんですよね。桂を…あの…銀と桂をどちらに駒台に残すかで。
 これはね、数少ない例外ですね。▲7五玉△6六馬▲6四玉に7二に桂を打って詰みなんだ(天才図2)。…いや天才ですね。や、もう…ええ、や…す……や、これはねえ、素晴らしいですね、この詰みを発見したのは。信じられません。よく発見しましたね」



「やあ、素晴らしい。や、これはねえ、あとで……あとで聞けば「こういう手で詰みがありました」というのが普通なんですよ。……桂を残した方がいいというのは、ちょっとこう…考え…られないですね。…素晴らしいとしか言いようがないですね」
「いやぁこんな天才と、ふふ、(天才が)いるんですねぇ」
「今、△6六馬と引いて、次▲6四玉の一手で、さっき言った7二に桂を打つ手が残って、▲5四玉に△4四金で詰みなんですよね。金と銀だと詰まないかもしれませんね、▲6四玉の時は」
「桂を残した方が良いということが、相当浮かびにくいんですよね。…いやあぁ素晴らしいです。ええ、驚きました。やあ、凄い。これはね、もの凄い(く)難度が高い詰みですね」
天才ですね。やあ本当に凄いもんです」
「やああぁぁ凄いなあ」
「郷田さんも詰まされても仕様がないと思ったんでしょうけど、この詰みは見えてなかったはずですね」
「いやあ、凄い詰み。素晴らしいとしか言いようがないですね。秒読みでこれを詰ますのは」
郷田棋王投了。
「途中はね、いろいろと山あり谷ありだったんですけど、この最後の素晴らしい詰みが圧巻でした。これはね素晴らしい詰みでした」

 「天才」という言葉に鬱積したものを抱えている先崎八段が、「天才」を連発。表現力豊かな先崎八段が「素晴らしい」「凄い」としか表現できない……先崎八段の感動の大きさを物語っている。

【追記1】
 昨日の記事で一番アクセス数が多かったのは、「羽生将棋 早指し将棋における強さ① ~NHK杯戦から思う~」(2012年2月14日記事)でした。
 記事の内容は、昨年のNHK杯の準々決勝羽生-郷田戦で、昨日の郷田-羽生戦の詰みが強烈だったので、「羽生 郷田」で検索した方が多く、その際、私の昨年の記事がヒットしてしまったのでしょう。325名の方に無駄足を踏ませて申し訳なく思い、急いで本記事を書いた次第です。

【追記2】
 天才図の「△8六銀では、△8八銀の方が簡明」と感想戦で述べられましたが、▲8八同玉とせず、▲8六玉と逃げると結局本譜と同じ詰み筋になる。なので、▲8八同玉とされた時の△7九馬▲7七玉に△7八馬と追いかける筋が見えにくく、実戦の△8六銀の方が簡明であると思える。それに、▲8六銀の方が鮮烈だよね。

【追記3】
クライマック図の一手前、6九に銀ではなく角を打ったのは、ある程度、詰めあがりの目途がついていたように思う。


【追記4】
△4四金(投了図)に「▲4四同龍(質問図)とする手はどうなのか?」というご質問がありました。


 ▲4四同龍には△同馬(詰み途中図1)



 逃げ場所は6五の一カ所で▲6五玉(詰み途中図2)



 そこで△5五飛(詰め上がり図)で詰みです。



 後手の2枚の桂馬がよく利いていますね。
 詰め上がり図の△5五飛では△6六飛▲7五玉△5三馬▲8五玉△8四歩でも詰んでいます。
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