英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

第69期名人戦 総括 その1

2011-07-07 19:27:32 | 将棋
 名人位失冠のショックから立ち直り、総括に入ろうと思った矢先、竜王戦の挑戦者決定決勝トーナメントの初戦(準々決勝相当)で、橋本七段に敗れてしまいました。橋本七段の果敢な攻めを受けとめ、勝利目前で落とし穴にハマってしまったような負け方。急転直下の結末に、何が起こったのか理解不能な昨夜でした。
 残念ながら、羽生二冠の竜王位挑戦、渡辺-羽生戦は観られません。となると、挑戦者は誰か?…というより、誰に挑戦者になって欲しいか、あるいは、誰との竜王戦を観たいかですが、佐藤(康)九段がもう一度登場して、渡辺竜王の強さの測定してもらうか(佐藤九段にもう一度ビッグタイトルを取っていただきたい)、現在、羽生、渡辺に次ぐ、或いは並ぶ実力者の久保二冠との最強決定戦も観たいです。それに、2日間みっちり戦う居飛車×振り飛車戦も観てみたいです。
 羽生二冠にとって、名人戦、竜王戦は残念な結果でしたが、棋聖戦で深浦九段をストレートで退け、対戦成績も引き離したのは嬉しい出来事。
 王位戦も挑戦権を獲得。三冠に戻し、健在をアピールしたいところですが、それより、広瀬王位との激戦が楽しみです。どんな将棋になるのか、ワクワクします。

 やはり、前置きが長くなってしまいました。
 では、まず、一局一局を簡単に振り返っていきたいと思います。

第1局
 初戦は、将棋に限らず、どんな勝負でも非常に大事で、シリーズの方向性を決定づけることが多い。今シリーズの場合も、初戦が流れを決定づけたと言ってよいのではないだろうか。
 
 第1図の少し前、先手の陣形は間合いが取りにくく、▲3六歩、▲4六歩(どちらの歩を先につくかも悩ましい)、▲4七銀まで進めてようやく充分になる。
 後手としては、それまでに仕掛けたい。それで、▲36歩を突いた瞬間に△7五歩と突っ掛けた。これに対し、中途半端な陣形のまま、▲7五同歩と取るのは危険とみて、▲4六歩と陣形の整備を優先させたのが第1図。
 森内九段は成算があっての着手と思われるが、突っ掛けられた歩を取ることができないのは、通常、おかしいと考えられる。実際、△8五桂▲6六銀△7六歩と後手の駒が進みながら歩損の回復が出来、後手としてもまずまずの展開のはず。
 羽生名人も意外な進展だったのかもしれない。これが、却って疑心暗鬼になり思考に迷いが入り込んでしまった。


 後手に突っ掛けさせ、先手がその反動を利用して馬を作った。これに対し、△3五歩は意外な手作り。ここでは、△5四角と馬に合わせて角を打ち、先手の主張の馬を消せば後手が指せるのではないかと言われていた。
 局後の研究でも、有力な手段だったようだが、羽生名人は「そんなところまで読むのか?」と詳細な読みの入れ方で、これを見送る。そして、その代わり着手したのが第2図の△3五歩。それほど、厳しい手とは思えず、次に取り込んでも▲3五桂の反撃がある。実際、▲4七銀と陣形を整えられ、△3六歩に▲3五桂△3四銀▲2四飛(第3図)と進み、先手の攻撃は飛車は銀取りの先、馬と桂は後手玉の急所の4三に利いていて、かなりの迫力がある。

 ここで、△1二角と踏ん張る手があり、まだまだ難解な形勢だったようだが、羽生名人の指し手は先手の飛車の成り込みにはかまわず、△8五飛と馬取りの圧力を掛ける強気な手。
しかし、さすがに強気過ぎで、飛車を成り込む手が大き過ぎ形勢を損ねてしまった。それでも、まだ、難しいところがあると思ったが、ズルズル押し切られてしまった。通常なら、意外と思える強気な手や、形にとらわれない柔軟な受けや、屈服とも取れる辛抱の受けなど、あの手この手の怪しい力を発揮することはなかった。

 この一局、森内九段の事前研究を警戒し過ぎた指しての迷いと、中終盤の勝負勘の鈍りで、羽生名人のひとり相撲で森内九段はそれに追従していただけ(もちろん、終盤の正確さは光っていた)。羽生ファンとしては、大いに不安を抱かせる内容だった。
 逆に、森内九段は手応えを感じたのではないだろうか。

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コメント (4)
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