カンボジア経済

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カンボジア新政権の政策パッケージ 五角形戦略を発表

2023年09月01日 | 経済
 8月22日、カンボジア国民議会(下院)の承認を受けて新首相に就任したフン・マネット氏は、国民議会で初の施政方針演説を行いました。新首相は、「政策基盤(Political Platform)」文書を国民議会に提出し、政策基盤の実施に関する5点の優先事項を説明しました。優先事項は、(1)平和・安定・治安・安全の確保と独立・主権の保護、(2)社会経済開発の拡充(政府の改革、安定的マクロ経済環境の確保、人的資源への投資拡充、インフォーマル経済への配慮、金融安定性の強化等)、(3)国民の生活改善(質の高い教育、労働訓練と雇用の確保、農民支援、最低賃金の引上げと労働環境の改善等)、(4)国民の生活安定と社会保障(すべての国民を対象とした社会保障システム、貧困・脆弱・危機の影響を受けた人々への社会支援等)、(5)社会経済開発におけるサステナビリティ重視(気候変動への耐性強化、人口ボーナスの活用、ジェンダー平等の推進、天然資源の管理、グリーン投資・経済の振興、公共投資の低炭素化、気候変動への対応準備等)です。
 更に、6つの優先政策プログラムを示しました。(1)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けた保健サービスの拡充、(2)貧困・脆弱世帯の若者への職業技術訓練、(3)貧困世帯、脆弱世帯、経済危機や緊急時に影響を受ける世帯への国家社会保障プログラムの制度化、(4)インフォーマル経済開発戦略の策定と迅速な実施によるインフォーマル労働者のフォーマル経済への誘致とフォーマルな社会保障システムによる保護の供与、(5)農産品の生産増加、市場アクセス改善、価格安定化等のための調整メカニズムと融資プログラムの導入、(6)すべての村落への農業技術スタッフの派遣と農業協同組合の組成の6政策です。
 また、8月24日、初の閣僚評議会全体会議(閣議)を開催し、演説しました。演説では、平和を維持し、経済成長を実現させると強調しました。中国をはじめ各国から投資を呼び込みたい考えを示し、2030年までに高中所得国に、50年までに高所得国となる目標を掲げました。具体的政策としては、これまでの四辺形戦略を拡充した「五角形戦略(第1期):Pentagonal Strategy-Phase I」を打ち出しました。五角形戦略には、5つのモットー、5つの目標、5つの優先事項が掲げられています。モットーは、成長、雇用、公平、効率、サステナビリティです。目標は、(1)年間成長率7%程度の危機に強い経済成長の確保、(2)若者に重点を置いた雇用の質量両面での拡充、(3)貧困率を10%以下とすることを目標とした貧困削減、(4)公的機関の質を改善するためのガバナンスの強化とビジネス・投資・貿易のためのビジネス環境改善、(5)サステナブルな社会・経済開発と気候変動への耐性強化です。優先事項は、国民、道路、水、電気、技術です。
 新政権については、世襲では何も変わらないという批判がある一方、若返りによる変化への期待も出ています。当面は、父親のフン・セン前首相の支えが必要であり、新政権でもこれまでの路線に沿った政策運営が行われると見られます。新首相が、独自色を出していくのは、ある程度時間が経ってからになるとの見方が一般的です。
(写真は、国民議会での施政方針演説。AKPより)

五角形戦略(英文です)
https://ncsd.moe.gov.kh/dcc/resource/document/pentagonal/strategy/phase/1


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