カンボジア経済

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カンボジアのマイクロファイナンス 上限金利導入のインパクト

2021年05月28日 | 経済
 4月29日、国際通貨基金(IMF)は、「カンボジアにおける金融包括に対する上限金利のインパクト」と題する報告書を発表しました。カンボジアでは、マイクロファイナンスが興隆し、機関数は2004年の7機関から2019年には10倍以上の82機関に増加しました。借入人数も2010年と比較して2019年には倍増以上の210万人・社となっています。こうした中で、脆弱な借入人を保護することを目的として、2017年3月に上限金利(年18%)が導入されました。報告書では、こうした政策的な金利規制は、これまでの経験から、意図しないインパクトを発生させて金融市場に歪みをもたらす可能性があるとしています。
 調査結果によりますと、まず、マイクロファイナンス機関は、上限金利導入後、「手数料」収入を増大させています。新規貸付時の手数料等を増加させることにより、手数料収入は3倍に増加していました。特に、小規模機関は、この傾向が強いとしています。また、経費を削減するため、特に大規模機関では、1件当たりの貸付規模の拡大も見られました。上限金利の導入は、マイクロファイナンス機関の経費削減・合理化にも結び付いたとしています。最近のフィンテックの発展により、電子送金や手続きのオンライン化等も進められ、さらなる合理化も期待されます。マイクロファイナンス機関同士の健全な競争や小規模機関の統合等を通じて合理化を進める一方で、貸付審査の強化等による貸付の健全性維持も借入人保護や貸付コストの削減に重要だと提言しています。
 国際通貨基金や世界銀行は、伝統的には、上限金利や政府金融機関による優遇金利等について、自由な金融市場を歪めるものとして批判的でした。今回の報告書では、金利から「手数料」へのシフトが起きるといったインパクトを指摘する一方で、貸付総額や借入人数は増大を続けたと分析しており、客観的な結論となっていると見られます。新型コロナの影響が出る前の分析ではありますが、カンボジアのマイクロファイナンスの発展に役立つことが期待されます。
(写真は、マイクロファイナンス機関大手のLOLC)

国際通貨基金のサイト(英文です)
https://www.imf.org/en/Publications/WP/Issues/2021/04/29/Impacts-of-Interest-Rate-Cap-on-Financial-Inclusion-in-Cambodia-50349


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