3月1日より国際極年(IPY)が始まる。これから2年間、世界各国の研究者が協力しあって、極域の科学観測及び研究に携る。
そうした日の午後3時少し前、低温研雪氷系のH先生が私の研究室に足を止めてくれた。とても柔らかく、ご機嫌の表情のH先生。3時から、研究室の若い人たちがお茶会に招待してくれるとのこと。踵を返した、その後ろ姿を見ていたら、なぜか、加山雄三の『旅人よ』を思い出した。
♪時は行くとも 命果てるまで 君よ 夢を心に 若き旅人よ♪
私は知っていた。そのお茶会は、H先生の還暦をお祝いする会なのだ。若い人たちから慕われているH先生をうらやましく思う。と同時に、かつて、恩師の還暦のお祝いを催さなかった、冷徹な我を恥じる。
種々の仕事が重なり、その日東京で開催されている、IPY関連の行事には参加できなかった。せめて翌日のIPYサテライトミーティングには何とか参加しようと、夜遅い便で東京に向かう。機内の音楽チャンネルからは、サラリーマンを29歳で辞めて、年収11万円でミュージシャンを志したスガシカオの『夜空ノムコウ』が流れて来た。
?あのころの未来に ぼくらは立っているのかなあ・・・
全てが思うほど うまくいかないみたいだ?