福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

或る日突然

2007-03-04 20:18:31 | 日記・エッセイ・コラム

先週の或る日突然、卒業生のお友達のMさんから連絡が入り、札幌に出張とのこと。夕方、Mさんと夕食をご一緒にすることといたしました。

「何が食べたいですか?」と、私が尋ねると、「ラーメン横丁のラーメンって、おいしいのですか?」と逆質問を受けたのです。

残念ながら、「ラーメン横丁」に行ったことがありません。日常を大学とその周辺で過ごしていると、ツーリスト以上に観光スポットを知らないのです。

01_64ただ、ラーメン横丁へ行かなくても、大学周辺にもおいしいラーメン屋さんがあります。そこで、東京日帰り出張の時、JR札幌駅から自宅へ帰る途中にふらっと立ち寄る「むつみや」(西口ヨドバシカメラの向かい)にMさんをお連れすることにいたしました。

実は、このお店、昼間はラーメン屋「むつみや」ですが、夕方から焼酎バー「華の02_35蔵」に変身します。ただし、コアになって働いている方は変わらず、同じメンツです。さらに付け加えると、土日の夕方は、変身せず、一日中「むつみや」です。赴任当時、この営業システムが分からず、お店を間違えたかな、と思うくらいでした。

さて、ここのお勧めは、野菜ラーメン。コクがあって、あっさりとしたスープです。毎回判を押したように同じものを頼むので、次第に野菜の量が増えて来て、あ03_17るときは通常の2倍と言うときもありました。このサービスは、20代の若者にはとてもありがたいのですが、メタボ(メタボリックシンドロームのこと)を気にしている中年オヤジにとっては、正直ツライものがあります。しかも、出張帰りの夜遅い時間(大抵、夜の11時)でのラーメンですからねえ。結局のところ、お店のお兄さんたちの気持ちがこもっているので、スープの最後の一滴まですすってしまうのです。

Mさんに「野菜ラーメン」を勧めようかと思い、メニューを眺めていると、マスターがやって来て、こう言うのです。

「実は、このお店、3月4日で閉めることになりました。私も今週始め、社長から突然言われてビックリしたんですけど。ごめんなさい」と。

しばし、沈黙が続き、返す言葉も見つからずにいたのですが、、、。 ここでラーメンをいただくのは、最後となりました。チヂレ太麺がもうなかったのですが、あり合わせの細麺でまぼろしの「北のみそラーメン」を作っていただきました。ありきたりの表現ですが、これが最後の味であるかと思うと、じっくりと味わいながら最後までいただきました。

もう半年前になるでしょうか。低温研から18条駅に向かう途中にある「平和食堂」の店の前に行くと、扉に張り紙がしてありました。

「勝手ながら、事情により、本日限りで閉店させていただくことになりました。長い間、ありがとうございました」

おじさんの手書きの張り紙です。「平和食堂」は、おじさんとおばさんの二人三脚で営業していた、学生相手の定食屋です。常連さんたちは、ここの日替わり定食を楽しみにやって来ていました。

一昨年前、つくばの研究所に勤めていた時の同僚2名(北大出身)が低温研を訪ねて来てくれて、食事をすることになりました。彼らが学生の頃良くいっていたと言うお店が、やはり「平和食堂」です。25年以上も前から、ご夫婦で営業されて来たのだそうです。彼らの青春の思い出がたっぷり詰まった「平和食堂」で、日替わり定食(600円)を3人で味わいました。ここの定食は揚げ物が少なく、中年オヤジにはとても良かったのですが、とても残念です。

或る日突然の悲しい知らせはとても辛いのですが、或る日突然の遠来からの客はいつでも大歓迎です。

そんなこんなを考えるきっかけをくれた、或る日突然訪ねて来てくれたMさんに感謝。 Mさん、法曹界でのご活躍、期待しております。

<追記>
余談ですが、トワ・エ・モアのゴールデンベストアルバムは、「或る日突然」ではじまります。