福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

「ちゃらんけ」のこころ

2007-03-02 01:18:58 | 日記・エッセイ・コラム

低温研に赴任して間もなく、2階の生物多様性グループからセミナーのお誘いを受けました。通称、「ちゃらんけセミナー」。動物生態の研究者にとって、あまり馴染みのない微生物の生態の世界を紹介する良い機会と考え、お引き受けすることにいたしました。

その頃、前の大学の学部の講義を担当していたので、毎週札幌から東京へ出かけていました。その都度、植物生態研究室に立ち寄り、低温研のことや札幌生活のことを鈴木準一郎さん(前職が低温研教員)にお聞きしていました。

いつものように、準一郎さんに、「今度、戸田さんの研究室で、チャンラケセミナーをすることにしたんだけれど、、、」と話しかけると、間髪入れず次の言葉が返って来ました。

それって、<ちゃらんけ>じゃないですか?
そうかもしれない。ところで、<ちゃらんけ>って、なあに?
<ちゃらんけ>というのは、アイヌ語で、論争などの真剣な議論とか、談判すると言う意味ですよ。のなかで、諍いなどのトラブルなどがあると、話し合いで解決していて、そう言うときにも<ちゃらんけ>という言葉を使ってたらしいですよ
へええー。いい言葉ですね

内地の人(北海道では、本州の人のことをこう呼ぶ)には、アイヌの言葉は縁遠いかもしれませんが、北海道に住んでいると、至る所にアイヌ語の地名が多いので、とても身近です。

さて、<ちゃらんけ>のこころについて、私なりに考えてみました。論争などの真剣な議論の前提として、議論の相手の立場を認め、尊重することではないでしょうか? この前提が崩れた時、暴力に発展したり、不条理な仕打ちをしたり、相手を完全に無視したりしてしまうのではないでしょうか? 

北海道に来てまだ3年弱ですが、自然の厳しい環境でお互いに共生する方策として、<ちゃらんけ>のこころが誕生したのではないかと、なんとなく感じているところです。

<追記>
昨晩、ちゃらんけの研究室の前を通ったら、Kさんに声をかけられました。
私、(憩いのお店の)ブランケット、持ってますよ。それに、クーラーバックも。でも、お皿もなかなかいいですよね!」と。

ああ、<ちゃらんけ>以前にノックアウトされてしまいました。さらに、現物のブランケットを見せられて、一言も出ませんでした。来週、貯まったポイントを冬季限定のブランケットと交換してこよう!

そう言えば、低温研近くの「憩いのお店」を紹介してくれたのも、前の大学の朝野さん(低温研出身)からでした。