[用例研究 174] 〈假定法-主語に條件④〉
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake)
1 This proposal you wrote is horrible! You butchered it!
1 Could you have written it better?
2 I don’t have to do things better than you! I’m the boss!
3 Boy, I sure wish I had a good answer for that one!
[解説]
1 This proposal you wrote is horrible! You butchered it!
・you wrote: 接觸節或は關係代名詞の省略と説明されます。「お前が書いたこの企畫書」といふ意味を傳へます。
・butcher: 「(へまをやつて)だいなしにする」
1 Could you have written it better?
・この can は「能力」を意味する助動詞で、〈could have 過去分詞〉としたのは假定法過去完了の歸結節のかたちとみることができるでせう。
假に平敍文として「もしあなたがそれを書いてゐたなら、(わたしより)もつとうまく書けたことでせう」の意味を假定法過去完了を用ゐて記してみるなら、次のやうになります(やや不自然ですが)。
*If you had written it, you could have written it better.
その後半の歸結節を疑問文にしたのが1コマめのせりふで、「(わたしより)もつとうまく書けたでせうか」と問ふことになります。素朴な疑問を呈してゐるのではなく、婉曲ながらも「自分よりうまくは書けなかつたらうと思ひますがね」といつた皮肉がこめられてゐるせりふではないかとの印象を受けます。それで2コマめの社長の開き直りにつながるのではないでせうか。
せりふでは條件節がありませんが、主語 you に條件が示唆されてゐるとみることができます。「あなただつたら」「あなたが書いたのだつたら」といつた條件が示唆され、「もつとうまく書けたでせうかね」と訊ねてゐるのでせう。
2 I don’t have to do things better than you! I’m the boss!
・don’t have to do: 「~しなくともよい」
・things: 「物事」「事物」
3 Boy, I sure wish I had a good answer for that one!
・boy: 間投詞。「おや」「まあ」「やれやれ」
・had: 假定法過去の動詞です。現實にはうまい應へを返せず殘念に思ひ、「うまい返しができればなあ」と願望を述べてゐます。
wishに假定法の節を續ける文體については、文法書では假定法の項に解説や例文があります。拙ブログでは「假定法の讀み方(7)」 (2011年6月8日付)に〈wish+假定法過去〉の文體、wishに假定法過去完了の節を續ける文體については、「假定法の讀み方(11)」 (2011年6月29日付)に解説や例文を掲載してをります。
・sure: 副詞。「確かに」「ほんたうに」「全く」
・one: 不定代名詞。前出の名詞 answer の代用です。
[意味把握チェック]
1 「おまへの書いたこの企畫書はひどいもんだな。目茶苦茶にしたな」
1 「社長なら(/あなたなら)もつとうまく書けたでせうかね」
2 「わしは物事をおまへよりうまくやらなくていいんだ。わしはボスなんだ(からな)」
3 「やれやれ、あの應答に(對する)うまい應答がぼくにあればなあと本當に思ふよ」