(本文全體に關はる設問)
5. 本文全体の内容と一致するものを選択肢から四つ選べ。
○△ A. Before the Industrial Revolution, people used to rely on various types of renewable energy resources. (産業革命前は、人々はさまざまなタイプの再生可能なエネルギー資源に頼つてゐたものであつた)
※ 本文2.1、2.2、2.3、4.1の記述から矛盾なく推論できる内容だと思はれますが、やや大雜把な書き換へとの印象もありますから保留にしておき、他の選擇肢の内容をみて再檢討するとしませう。
× B. When the Industrial Revolution happened, people stopped using natural resources and started to use fossil fuels instead. (産業革命が起こつたとき、人々は天然資源を利用するのをやめ、代はりに化石燃料を使ひ始めた)
※ 2.4で Fossil fuels are also natural resources (化石燃料もまた天然資源である)と述べてゐますから stopped using natural resources は誤りです。
○ C. Fossil fuels are not regarded as renewable, because it would take millions of years for them to be formed again. (化石燃料は再生可能とは看做されない。なぜならそれらが再び生成されるのに何百萬年もかかるだらうからである)
※ 2.4、2.5、3.3、3.4の内容から判斷して間違ひとは言へないでせう。
× D. The IPCC reported that obtaining energy from renewable resources is not stable and not efficient so that it is too early for us to rely on them. (IPCCの報告では、再生可能資源からエネルギーを得るのは不安定で效率的でない。それで(/その結果)私たちがそれらに頼るには時期尚早である)
※ 5.1、5.2、5.3 に該當します。現時點では不安定で非效率ではあるものの、それはIPCCの報告とは書いてゐません。またIPCCは再生可能エネルギーをむしろ肯定的に捉へてゐます。
×× E. The IPCC suggested that in about 20 years, renewable resources could replace non-renewable ones. (IPCCは約20年で再生可能資源は再生可能でない資源にとつて代はることができるだらうと示唆した)
※ 本文に述べられてゐません。5.2の内容參照。
○△ F. The IPCC stated that the use of renewable resources should be good for the prevention of global warming and for the development of economies in poor countries. (IPCCは再生可能資源の利用は地球温暖化防止や貧しい國々の經濟發展に役立つはずだと述べた)
※ 氣候變動が地球温暖化により引き起されると考へれば、概ね本文5.3の趣旨にそつてゐます。
××× G. The IPCC did not consider nuclear power because they thought it was too risky, as proved by the nuclear accident inJapan. (IPCCは原子力を考察しなかつた。なぜなら日本の原子力事故で證明されるやうに、原子力は危險が大き過ぎろと考へたからである)
※ もつともらしい記述ですが、本文5.5では「日本の原子力事故については議論されてゐないし、結論に影響はない」と述べてゐます。
××× H. About 186 billion dollars were invested inChina’s renewable resources in 2010 alone. (2010年だけで約1860億ドルが中國の再生可能資源に投資された)
※ 6.1の記述と異なります。
×× I. According to the IPCC, the investment in renewable energy is certain to exceed $1.5 trillion by 2020 and at least $7.2 trillion by 2030. (IPCCによると、再生可能エネルギーへの投資は2020年までに1兆5000億ドルを超え、2030年までに少なくとも7兆2000億ドルを超えることが確實である)
※ 7.1では必要額の豫測を述べてゐますが、certainとまでは言つてゐません。exceed $1.5 trillion や at least $7.2 trillion の書き換へも意味がずれてゐます。
○○ J. The IPCC argues that political support from governments is necessary in order to promote the benefits of renewable energy resources. (IPCCは、再生可能エネルギーの利點を推進するためには政府からの政治的支援が必要だと論じてゐる)
※ 7.2の内容に合致します。
解答例としては、保留分も正解に入れて、A, C, F, J の四つを擧げたいと考へます。原文と選擇肢との(意味上の)距離には出題者によつて結構幅があり、出題者の意圖がわかりにくいこともありますから、内容眞僞の問題は厄介です。
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長文問題では客觀形式で内容の眞僞を問ふ設問をよく見かけます。本文に合致する選擇肢の數を指定する問題やすべて選擇肢に T / F 或は○×を記入させる問題、パラグラフの適切な要約やタイトルを選ばせる問題などがあります。
選擇肢の英文は概して簡潔平易ですから、本文がしつかり讀めれば解けるはずですが、試驗の場合は時間の制約があるため、また選擇肢の英文には多少意味上のずれと曖昧さが加はるために、解いてゆく上で何らか工夫を加へる餘地があるかもしれません。特に長い英文、こみいつた内容の場合には何らかの方策がほしくなることがあります。
ところで、選擇肢はどうやつてつくるのでせうか。推測してみますと、
(正しい選擇肢)
① 本文(の一部)の趣旨を要約する
② 本文(の一部)の趣旨を別のことばでできるだけ正確に表現する
(※本文中の數値を計算させたり、本文の記述から無理なく推論できる言明を含めたりすることもあります)
(正しくない選擇肢は言明の趣旨を變へたり矛楯する内容を含めることになります)
③ 文中の一部を別のことばに置き換へたり、ことばを入れ換へる(※主語と目的語など)
④ 否定語を加へる、または除く
⑤ 數値を交換する、または數値を變へる
⑥ 本文中に無い内容をつけ加へる
(※つい首肯したくなるやうな言明を新たに書き起こしたり、豫想される誤讀を内容に盛り込むこともあります)
以上を踏へて、解法を考へてみましたが、參考になるかどうか……。「叩き台」としてご利用いただければ幸ひです。
1 本文を讀む際に、パラグラフ毎に主題や氣づきをごく簡略な日本語で横にメモしておく
論説文は1パラグラフ1主題が原則であり、先頭にそのパラグラフの主題が記されてゐることが多いやうです。少々わからない箇所があつてもおほよそ掴んだ内容をパラグラフわきにメモしておくと、選擇肢檢討の際に時間を節約することができます。選擇肢に記された内容は、ほとんどの場合、あるパラグラフまたはそのパラグラフ中のいくつかの文に該當箇所がみつかるからです。(※複數のパラグラフにまたがる選擇肢や全體の主題や要旨に關はる選擇肢が含まれてゐることもあります)
2 選擇肢中の誤つた語句・數値を×で消す
選擇肢の中に、本文の内容に反する箇所(表現、ことば、數値の入れ換へ、など)がみつかつたら、その箇所に大きな×印をつける方法も併用します。また「疑はしい / どうかな?」と思はれる箇所に大きな△印をつけてもいいでせう。これをやつておくと後の檢證・確認がやりやすくなります。
内容眞僞問題の選擇肢については、「正解」よりも「間違ひ」、つまり本文と大きく異なる箇所をみつけるはうが容易です。その理由は上に記したとほり、「正解」は本文を他の表現に書き換へてつくるからです。
3 印象を記號化し目に見えるやうにする
選擇肢を讀んで抱く印象を記號化して頭に記します。記號はどんなものでも可いと思ひます。
例として筆者が使つてゐる記號を紹介しますと、「○○○」「○○」「○」「△」「×」「××」「×××」「?」。全部を使ふわけではありませんが、選擇肢を讀んで正しいといふ印象が極めて強ければ○○○、逆に明らかにちがふと確信できれば×××、その中間をいくつか適宜使ひ分けて印象を記號化するわけです。△は「どちらとも言へない / 再吟味を要する」、?は「選擇肢の文意がわからない」場合につけます。
正答の數が指定されてゐれば○の多い方から擇つてゆきます。足らなければ△や?を檢討します。數が指定されてゐなければ△の吟味に時間をかけます。
正答は、本文とは異なる語句・文體を使つて、できるだけ原文の趣旨を表現しようとして出題者が新たにつくるわけですから、どうしてもぴつたり同じとは思へないことがあります。「趣旨は概ね同じと思はれるんだが、微妙なずれが感じられる」といつた場合が結構あるものです。かうした場合に、例へば「○○△」といつた記號を使ひます。「まづ正しいとは思ふんだが、ちよつとずれてるかも/くさいかも…」といふ印象を記號化してゐるわけです。
「誤つてゐると思ふが、あとでもう少し檢討したい」といふ選擇肢には「×△」をつけておきます。
※内容眞僞問題の選擇肢は概ね本文より簡潔で讀みやすいものです。本文を讀み解くヒントがみつかることもありますし、當然惑はされるリスクもあるわけですが、本文をざつと讀んだ後に一度目を通しておくことをおすすめします。