キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

海鼠

2008年02月16日 | Weblog
最近歯が悪くなってきて、烏賊蛸鮑などかつて好物であったものを敬遠勝ちになってきましたが、私にとって海鼠酢というのは冬に欠かせない味覚です。残念ながら烏賊蛸鮑同様ある意味それ以上その硬さにおいて苦手意識を持つようになってきました。

ぬるぬるした表皮を良く塩で揉んでぬめりを取りながら〆て、薄く切って酢につけるわけですが、硬く締まれば締まるほど歯ごたえが良くなり、強く噛み締めた身からあふれでる海の滴が口中に広がり一面の磯となり、限りなく広がる大海は八つ目の海を我が口中に擁した様な気宇壮大な食い物となります。合わせる酒は清酒以外考えられません。

この海鼠、印象的な記憶が三つあります。二十台後半三宮の十日恵比寿の日、露天で赤海鼠をおばさんが売っていて、関西は海鼠が露天商のバイのアイテムになるんだと関東風の驚きを感じた事。十年ほど前、平塚港で構内の岸壁にくっついている海鼠を漁師が船からタモで掬い上げるのを見たとき、魚屋で高いのを買っていたけどタモさえあれば簡単に獲れるんだと、以後魚屋で買うのがばかばかしくなった日の事。二年前、香港ヴィネスポでうちのサプライヤーが10社も来ていたので、最終日我が社主催でディナーパーティーを下町の中華レストランで開いてやったのですが、美味そうな海鼠の姿煮が出てきても、香港駐在のヴァルファルモサのジョナサン以外手をつけず、二人で死ぬほど海鼠を喰いまくった日の事。

ちなみに中華の海鼠は一度乾燥したやつを戻して煮込んであるので柔らかく、かすかな歯ごたえと、煮汁の味の奥に隠れた微かな潮の俤を懐かしんで食するもので、頭の後ろの方が暖かくなるような記憶を刺激する食べ物です。雑味のある中国酒に合います。
コメント
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