▼東京工業大学、政治・歴史学専攻の中島岳志教授が、「保守とは何か」を見極めることが、今回の衆議院解散選挙後の重要な課題であるとする、北海道新聞25日夕刊の記事が興味深い。
▼「アベ一強独裁」に鉄槌をくらわすという、今回の選挙と思ったが、野党分裂、与党大勝利という結果に、いささか呆れ気味で、厭世感漂う世の中になってきたようだ。その混迷さの一原因を、18歳から29歳の若者の「保守認識」にあるという指摘だ。
▼若者は、一度も変えてこない憲法を改正しようという自民党の主張を「革新的」と考え、共産党の護憲思想は、むしろ「保守的」とみなしているようだ。保守思想家の西部邁氏の言葉を引用すると「アベ総理は真の保守ではない」と断言する。米国という国家は、歴史的経験値の蓄積を欠いているため、本質的な保守思想が共有されていないのに、その「米国にべったり」のアベ総理は、自分は保守と公言するが、最初から保守ではないと断定している。
▼多くの庶民が共有してきた経験値や良識、伝統、慣習を大切にし、時代の変化に応じて徐々に変えていく。「革命」のような極端な社会改造には、理性へのおごりが含まれているとみなし、慎重に遠ざける。保守とは、歴史の英知に基づく永遠の『微調整』に他ならないと、指摘する。
▼自民党の改憲草案は「戦争しない国から戦争のできる国へ」の、大改革だ。これは理性へのおごりで、この考えは「革新」そのものだ。アベ総理の憲法解釈が間違っていると、多くの憲法学者が指摘するが「保守」という解釈も十分理解していないようだ。
▼今回の大勝利で、憲法改正が国会のまな板に乗ることになれば、アベ総理は靖国神社参拝も、解禁するに違いない。靖国参拝の議員の多くは、靖国の英霊たちは、国家のために命をかけてくれたので、今の我が国の繁栄の基礎を築いてくれたという解釈だ。だが、靖国には国家に死を強制された若者の無念さが「戦争反対」を国民に訴え続けていると解釈するのが、正しいのではないか。
▼とにもかくにも、理解力の乏しい総理ではないか。その総理が、「信頼する人物」と称するトランプ大統領が訪日する。日米同盟の親分は、どんな振る舞いを見せるのか注目したい。世界のトップ・プロゴルファーの松山選手も駆り出されて、ゴルフをするという。ラウンドには、アベ総理の盟友、加計幸太郎氏も一緒というなら、NHKで全ラウンドを放送してほしい。
▼今回のローカル・ルールは「トランプ大統領のみ、地位協定により、OBを適用しない」とするという「忖度」に違いない。ラウンド中の粋な会話はこうだ。アベ総理:「このボールに核を埋め込み、北朝鮮に向けて飛ばしまいましょう」。トランプ大統領:「それはいいアイディアだ。北の若大将の家に、ホールインワンしてもらえないか、松山君」。松山選手:「私は飛びすぎて、ロシアに飛んだら困りますから」。加計理事長:「松山君、加計問題にも一発打って、すべてチャラにしてもらえないかな」。・・・ゴルフ場に笑いが響く。
▼次のティーグランドに立った時「オナーは誰か」と聞いたら、キャディーさんが「アメリカン・ファースト」と答えたので、大笑いになった。そのキャディーさんの顔を見たら「みどりのタヌキ」だったりして。
▼保守も革新もごちゃ混ぜになってしまった日本にいて「故郷・ファースト」の自分も、やはり保守系列の人間ではないかと疑っている私だ。