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鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代半ばのオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1465~生物史図譜

2018-01-08 10:38:29 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、生命史図譜です。

古生物の最新復元イラストをたっぷり鑑賞したくて「生命史図譜」を購入しました。
著者は、科学雑誌「ニュートン」のライターであり、「ザ・パーフェクト―日本初の恐竜全身骨格発掘記: ハドロサウルス発見から進化の謎まで」の著者である土屋健。

本を手に取って驚いたのはその重さ。
単行本より一回り大きいタテヨコに厚さ2.4cmならこれくらいの重さ、というのを5割増しでオーバーしています。
さすがフルカラーの図譜!
本を開く前に納得しました。

さて本書の感想を書く前にAMAZONの内容紹介を引用します。
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地質年代ごとに、古生物を化石写真と復元イラストで紹介してきた『生物ミステリーPRO 』古生物シリーズ。
エディアカラ紀からはじまった本シリーズは、足かけ4年余りをかけ、10冊目の第四紀をもって大団円を迎えました。
今回は、「古生物シリーズ」の総まとめ的な“別冊"をお届けします。
といっても、「この1冊でも楽しめる」仕様となっております。
もちろん、シリーズを1冊でもお持ちの方には、「もっとお役に立てる」工夫が満載です。

『生命史図譜』には、制作陣がぜひともチャレンジしてみたかったことが3つ詰まっています。

●図譜パート――古生物を「分類順」に再編纂
シリーズ第1~10巻に登場する復元イラスト付き生物を、分類ごとにまとめ直し、カタログ的に紹介しました。
時代をまたいでどんな近縁種がいたのか、分類単位の中でどのような進化があったのか、がとてもわかりやすくなっています。
同時に、このパートでは、書籍刊行後に発表された重大な研究成果も掲載。
古生物情報のアップデートや復元イラストの更新、新イラストの追加も行っています。

●シリーズ総索引パート――情報へのアクセス向上
古生物の研究者や愛好家は、書籍の「索引で情報を探す」ことをよくやります。
第1~10巻を個々に検索するのはタイヘンなので、「○巻の○ページ」という具合の総索引を作成しました。
シリーズ全体を、よりいっそう便利にお使いいただけます。

●国内の博物館パート――著者のプチガイド
日本各地には、古生物をあつかった素晴らしい博物館がたくさんあります。
本シリーズを読んで興味をもったら、ぜひ博物館を訪ねてみてください。
これまで以上に、化石が皆さまにとって身近なものになるでしょう。

このページをご覧いただいている皆さまに大きな感謝を。
本書が皆さまの“古生物ライフ"の助けになれば幸いです。
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サイエンスイラストレーターが描いた最新の復元イラストは、いったい何枚あったのでしょう?
これらは、内容紹介にもあった通り、足かけ4年余りをかけた古生物シリーズ全10巻のために描かれたもの。
昨年末に北斎漫画全巻を一気に鑑賞したときと同様、次から次へ出てくるイラストのボリューム感に圧倒されました。
前者は写実性・芸術性を追求し、後者は科学的正確性を追求している違いこそあれど、感動的なほどに見事な仕事です。

内容紹介にもある通り、例えばサメのご先祖がメガロドンに至るまでの進化を知ることができる構成は観ていて実に楽しい。
復元イラスト中心に必要最小限の解説文。
図鑑好きにはたまりません。

古生代カンブリア紀を代表するアノマノカリスに関するパートが一番興味深かったです。
アノマノカリスのご先祖から子孫までの多彩な系統が一目瞭然。
あの大きな触手をヒゲクジラのヒゲのようにプランクトンを濾し取るために発達させた種がいることや、三葉虫をかじるほどの力はなかったかもしれないこと。
面白すぎ!

惜しむらくは漢字に振り仮名がほとんど振られていないこと。
読者の対象を中学生以上と考えてのことでしょうが、本書の内容なら小学生も飛びつくはず。
自分もそんな小学生だったことを思い出しました。

(おまけ ~ 表紙の写真)
琥珀の中に閉じ込められているのは、何と「恐竜のしっぽ」!
映画ジュラシックパークは、琥珀の中に閉じ込められた蚊から取り出したDNAから恐竜を再生します。
表紙の化石があれば、そんなに回りくどいことをせずに恐竜のDNAを取り出せます。
これは大発見です。
ああ、誰か恐竜を再生してくれないかな?





お気に入りその1464~薬丸岳

2018-01-05 12:40:33 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、薬丸岳です。

薬丸岳の作品は、これまで「天使のナイフ」と「刑事のまなざし」を読みました。
どちらも素晴らしい作品でした。
いつかまたこの作家の作品を読もうと思っていましたが、まさか新年早々読むとは自分でも思っていませんでした。
小泉今日子のエッセイを年末年始で読み終わったので、次は小説でも読もうと思い、未読の棚から何となく薬丸岳の「虚夢」を選びました。
それほど大きな期待をせずに読みましたが、休みボケしている頭を再始動させるに十分な傑作でした。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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通り魔事件によって娘の命は奪われた。
だが犯人は「心神喪失」状態であったとされ、罪に問われることはなかった。
心に大きな傷を負った男は妻とも別れてしまう。
そして事件から4年、元妻から突然、「あの男」を街で見たと告げられる。
娘を殺めた男に近づこうとするが……。
人の心の脆さと強さに踏み込んだ感動作。
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必要最小限の登場人物で最大限の効果を生むべく練られたストーリーは実に秀逸。
作品の中で、登場人物の関わる殺人事件が3件出てくるにも関わらず、警察関係者が全く出てきません。
心神喪失した者による犯罪はこれを裁かず、という刑法39条を主題としながら警察関係者が出てこないなんて!
読者が犯罪被害者と共に悩み、法律の問題点について考えることに、それだけ特化しているということです。
そして登場する女性2人の秘密がラストで明らかになる大どんでん返し!
エンターテインメント小説ならではの醍醐味も十分兼ね備えています。

年末ジャンボは当たりませんでしたが、新年早々選んだ本は大当たり。
こりゃ春から縁起が良いわい!



お気に入りその1463~風雲児たち

2018-01-03 12:05:13 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、風雲児たちです。

元日のドラマ「風雲児たち ~蘭学革命編~」は面白かったです。
「みなもと太郎」という人が描いているマンガが原作で、三谷幸喜が脚本を書いています。
あの有名な「解体新書」には著者名として前野良沢の名が載っていないそうで、その理由を説明したドラマでした。

解体新書の著者として知られているのは、杉田玄白と前野良沢、というのは有名な話。
それなのに実際は良沢の名が無いなんて驚きました。

医療技術の遅れを改善すべく、杉田と前野は「ターヘルアナトミア」を翻訳し出版しようとします。
でも当時は田沼意次による恐怖政治の時代。
漢方医たちが強い勢力を誇っていました。
出版計画はつぶされ、訳者は処罰される可能性があったそう。
そのため杉田は真野の名を隠した、という筋立ては説得力があります。
事実か否かは別として、ドラマに引き込む力を有していました。

登場人物たちの交流も史実とは随分違うのでしょうが、娯楽ドラマとしては一級品の仕上がりでした。
さすがは三谷幸喜。

見逃して方は、ぜひ再放送でご覧ください。
損はさせません。

蛇足ですが、杉田と前野はうちの夫婦と多少の関係があります。
杉田の子孫は整形外科病院をやっており、妻が入院してその事実を知りました。
前野の子孫は40年ほど前まで大学教授をしており、私は授業を受けたことがあります。
わずかな関わりですが、解体新書の話題がつい気になる夫婦です。












お気に入りその1462~小泉今日子

2018-01-01 12:40:33 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、小泉今日子です。

2018年元旦。
風呂に入り、初詣に行き、おせちを食べて、読みかけの本を読み終えました。

三浦しをんの「小暮荘物語」に寄せて書かれた小泉今日子の文章がとても気に入り、読むことにしたエッセイ集「黄色いマンション 黒い猫」。
数あるエッセイ本の中から講談社エッセイ賞を受賞したそうですから、とても期待しました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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2007年~2016年まで、SWITCH連載「原宿百景」に綴った33篇+特別書き下ろし1篇
1982年のデビュー以来、歌手、女優として、映画、舞台、テレビ、CM、そして執筆と活動の幅を広げながら、そのすべてを支持され、時を経てもぶれることのない圧倒的な存在感を放つ、小泉今日子。
本書は、彼女が十代の頃から親しみ、かつては住んでいたこともある原宿の町を再び歩き、変わり続ける街並に彼女の半世の思い出を重ねながら、9年間にわたって書き綴った自伝的エッセイ集です。
幼い日々の記憶、中学時代の友人、デビューのきっかけ、アイドル時代に住んだ原宿、秘密の恋、そして、父と姉の死……。
彼女にとって、今だから書けること、今しか書けないことが本書には詰め込まれています。
また、特別書き下ろしは、「逃避行、そして半世紀」と題し、50歳の誕生日を迎えてから初めて、自身の今の気持ちと50代突入への想いが綴られています。
同じ時代を生きる女性だけでなく、彼女と共に歳を重ねてきた多くの人の胸に刺さる彼女なりのメッセージが込められています。
小泉今日子、待望のエッセイ集、この春刊行です。
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「自伝的エッセイ」と紹介される通り、著者の半生を赤裸々に語っています。
著者はアイドルであり、女優であり、もの書きです。
プライバシーを保てない暮らしを続けてきましたが、家族はシロウトです。
そこまでズバリと書かれると迷惑なのでは?と他人ながら心配しながら読みました。
ただ、だからこそ、そのときどきの著者の心情が伝わってきます。
また心情が伝わりやすいのは世代が近いせいでもあるでしょう。

さて本書は、エッセイ賞を受賞するほど魅力的なエッセイだったでしょうか?
エッセイの達人である高峰秀子や向田邦子と比べるとまだまだという感じは否めません。
でのその資質は強く感じました。

エッセイの面白さは、著者が感性豊かなことと、それをうまく表現する文章力の二点にかかっていると思います。
著者にはそれがある程度備わっています。
彼女は中学高校と学校をさぼりまくって、既成概念にとらわれない生き方をしてきました。
また高校中退後は、いつもかばんに辞書がはいっていました。
そして読書が大好き。
「辞書が先生」って高峰秀子も書いていました。
向田邦子ほどではないにしても読書好きです。

とりあえずもう一冊読んでみようと思います。
今度は方向性を変えて「小泉今日子 書評集」です。
期待しています。