元・副会長のCinema Days

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「いつかギラギラする日」

2017-03-12 06:20:35 | 映画の感想(あ行)
 92年作品。当時は(邦画では珍しく)アクション大作として賑々しく封切られたが、内容も興行収入もパッとせず、盛り下がってしまったシャシンだ。確かに欠点が多すぎて個人的には評価は出来ないが、何やら捨てがたいものはあると思う。ともあれ、深作欣二御大の“貫禄”だけは感じられるので“観て損する映画”と片付けるには忍びないだろう。

 一時期“現場”から遠ざかっていたギャングの神崎は、恋人の美里に“仕事”を再開することを打ち明ける。ターゲットは洞爺湖の温泉ホテルの売上金2億円を運ぶ現金輸送車で、昔の仲間である井村と柴、そして彼らがよく出かけるディスコのオーナーである角野を加えて計画を実行に移す。ところが2億円が入っているはずのジュラルミンケースにあったのは、たった5千万の現金だけだった。



 仕方なく神崎は4等分しようとするが、角野が裏切って銃を乱射。金を奪って柴のガールフレンドである麻衣と一緒に逃走する。神崎は追撃を開始するが、金を横取りしようとするヤクザ連中と殺し屋の野地、そして警察も加わってのバトルが大々的に展開する。

 行き当たりばったりのストーリー展開と、過度にカリカチュアライズされた紋切り型のキャラクター設定。各プロットの精度はハナから考えられておらず、乱雑なシークエンスが積み重ねられるのみだ。主演の萩原健一が深作監督に“これ、Vシネマみたいだよ”と不満を述べたらしいが、はっきり言ってVシネマにはこれよりもっとマシな作品がいくらでもあると想像する。

 だが、ドラマツルギーを無視したようなアクション場面の連続は、本作は平易な娯楽編を狙っていないような気もする。つまりは“アクションのためのアクション”に徹し、その先に何があるのかも考えないまま突っ走ってしまった印象を受けるのだ。それに、ここでの連続的なアクション・シーンは作劇の欠点をカバーしているわけでもなく、逆にさらけ出している。まさに神経症的な有り様は、単なる“失敗作”との烙印を押されることを必死で拒否するような、歪んだ存在感がここにはある。

 萩原をはじめ木村一八や荻野目慶子、千葉真一、石橋蓮司、原田芳雄といったキャストのノリの良さは圧倒的。首都圏では撮影が難しいとのことで、北海道でロケした活劇場面のヴォルテージの高さは言うまでもない。ウェルメイドなドラマを望む向きには奨められないが、常軌を逸したような熱気を感じたい映画好きならば観て損はないだろう。

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