元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「キス&キル」

2010-12-14 06:24:27 | 映画の感想(か行)

 (原題:KILLERS )もうちょっと面白くならないものかと思った。たぶん作り手は“ラブコメに活劇をプラスすれば一粒で二度美味しいはずだ”と踏んだのだろうが、それが成功するには両方に精通していなければならない。ところがロバート・ルケティックという監督は、ラブコメは得意だがアクションに関してはまるでダメみたいである。これでは観ていて居心地が悪くなるのも仕方がない。

 両親と一緒の気の乗らない南仏への旅行に出掛けたヒロインは、そこでステキな男に出会う。二人はたちまち恋に落ち、スピード結婚に至るのだが、彼には秘密があった。実は凄腕の元・CIAのエージェントだったのだ。アトランタ郊外の新興住宅地で3年間の平穏な結婚生活が過ぎたある日、かつてのダンナの上司が招いたトラブルにより突然に夫婦揃って殺し屋に狙われるハメになる。もちろん彼女も持ったことさえなかった銃を手に大奮闘。

 本作で一番面白くなりそうなモチーフは、それまで主人公達と仲良くやっていた近所の人々や職場の連中が、いきなり殺し屋としての本性をあらわして次々と襲って来るという設定である。これはこの映画と似たテイストを持つ「Mr.&Mrs.スミス」とか最近観た「ナイト&デイ」とかいった作品にはないブラックなネタであり、上手く突き詰めればかなり盛り上がったと思う。

 ところが前述の通り演出担当がラブコメ製作要員でしかなく、描き方が相当ぬるい。何となく乱闘シーンが始まり、また何となく終わるだけである。ここでたとえば“誰が殺し屋か分からない”というサスペンスを大々的に挿入させれば画面に緊張感が走ったはずだが、そういうアイデアも思い付かないようだ。活劇場面も見るべきものがなく、凡庸な展開に終始するだけ。

 主演のアシュトン・カッチャーとキャサリン・ハイグルは、ルックスは良いがどこか抜けているというキャラクター設定にピッタリの配役。どんなにハメを外しても下品にならないのが良い。ヒロインの父親役のトム・セレックが一筋縄ではいかないオッサンを渋く演じれば、母親に扮したキャサリン・オハラのボケぷりも相当なもの(笑)。

 かようにキャスティングは良いのに、キレもコクもない作劇が映画のヴォルテージを下げている。ただし往年のスパイ映画のパロディみたいな冒頭のタイトルバックと、観光気分あふれる南仏ニースの風景だけは見ものだ。ロルフ・ケントによる音楽も悪くない。

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