元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

青山七恵「ひとり日和」

2008-01-16 06:46:50 | 読書感想文
 無為な日々を送る20歳のヒロインが、母親の遠縁である71歳の老女と同居することによって、内面を見つめ直してゆく過程を描く、第136回芥川賞受賞作。審査委員が絶賛したらしいが、はっきり言ってどこが面白いのか分からない。要するに“身持ちの悪い母親の娘は、手癖が悪かった”という“この母にしてこの娘あり”みたいな身も蓋もないハナシを勿体ぶった心理描写(らしきもの)で漫然と綴っただけの駄作である。

 とにかくこの主人公、鬱陶しいのである。優柔不断で怠惰で、男にだらしなく、底抜けに頭が悪い。断っておくが、別に“主人公がダメであること自体がいけない”と言うつもりはない。どんなにヒロインがダメ人間であろうと、そのダメっぷりを突き詰めて小説的興趣にまで昇華されていれば文句はないのである。ところが本作はダメぶりを肯定するでも否定するでもなく、いわば“こんな風に思うことって、誰にでもあるよね”みたいな、読者に媚びを売るような微温的アーティクルに終始しているのが、実に不愉快である。

 内面的モノローグみたいなものが多いわりには、主人公と母、主人公とボーイフレンド、そして主人公と老女との関係性がまったく詳述されていない。出来の悪い日記風ブログに無理矢理付き合わされているような感じで、まさに“自意識過剰の認識不足”を地で行く体たらくだ。読んでいる最中“なんでこんな本を読んでんだよ。オレは”という自問自答とそれに続く自己嫌悪に苛まれてしまった(爆)。

 芥川賞を取っていなかったら絶対手にしない類の書物だ。まあ、作者の青山はまだ若いだけに今後“大化け”する可能性も皆無ではないとは思うが、この程度の本で賞を貰ってしまうのは、本人のためにもならないのではと思ったりした。

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