元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その28)。

2013-12-08 08:02:57 | 音楽ネタ
 最近は若い世代の間で“ヤバい”という言葉がポジティヴな意味で使われている・・・・ということが巷間に取り沙汰されているようだが、実は我々世代の十代の頃(つまり、かなり昔)にも“ヤバい”を肯定的な意味に捉えた使い回しは存在した。しかし、今のように滅多矢鱈と連発はしない。本当に凄いものに遭遇したとき口に出るのが“ヤバい”というフレーズだった。

 音楽に限った話では、当時思わず“コイツはヤバい!”と呟いたのはセックス・ピストルズのデビューアルバム「勝手にしやがれ!」を聴いた時だった。とにかく圧倒的な衝撃度で、これがヤバくなくて何がヤバいのかと感じたものだ。それから約35年経った今、久々に“ヤバいぞこれ!”と言いたくなるようなディスクに出会った。アイルランドのバンド、ザ・ストライプスのファースト・アルバム「スナップショット」である。



 メンバー全員が90年代半ばから後半の生まれという、トンでもない若さ。ルックスも細身で頼りないのだが、出てくる音は骨太で正攻法のロックンロールだ。80年代初頭に台頭したパブ・ロックに通じるところもあるが、とにかくこの疾走感とヘヴィな手応えには瞠目させられる。若くて、パワフルで、カッコいい。テクニックも確かなものがある(特にギター)。

 奇しくもプロデューサーは「勝手にしやがれ!」と同じクリス・トーマスだ。録音も決して悪くは無い。珍しいことに収録曲の半数がカバー曲。思えばビートルズもローリング・ストーンズもデビュー当時のアルバムは既成曲のカバーが目立っていたことを考えると、それは欠点になっていない。それどころか新鮮だ。とにかくロック好きにとっては必聴盤だろう。

 若手グループをもうひとつ紹介したい。カリフォルニア出身の三人姉妹から成るハイムだ(ハイムは3人の名字である)。デビュー・アルバムの「デイズ・アー・ゴーン」は全米ベストテンに入るヒット。全英ではトップに立った。



 主にシンセサイザーをフィーチャーしたポップ・サウンドなのだが、びっくりするほど曲作りのセンスが良い。いかにも西海岸のバンドらしい明るく軽快なリズム運びで、80年代のポップスやR&B、ヒップホップといった要素を上手く取り入れ、メロディ・ラインも蠱惑的に仕上がっている。隅々まで練り上げられており、スキがない。

 ヴォーカルが意外にボーイッシュであるのも魅力で、切れ味のあるギターも含めて、明朗な中にもクールな響きが感じられるのも面白い。歌詞はけっこうシビアなところがあり、これも興味深い。また、かなりステージ・アクトは定評があるらしく、一度は生で観てみたいと思わせる。

 私はフュージョンという音楽にはあまり興味は無いのだが、珍しく買ってしまったのがニューヨーク州バッファロー出身のバンド、スパイロ・ジャイラのセカンド・アルバム「モーニング・ダンス」だ。理由は優秀録音として知られたこのディスクが、最近Blu-spec CD2という高音質ヴァージョンで再発されたからである。



 このアルバムが最初リリースされたのは79年で、趣味のオーディオが社会的に認知されていた頃でもあり、表題曲の「モーニング・ダンス」はオーディオ機器のデモ用として各ショップで鳴り響いていたことを思い出す。今回買い求めたCDでもそのセールスポイントは遺憾なく発揮されており、録音レベルは低いが、オーディオ的快感の大きいクリアな音像の取り出し方には端倪すべからざるものがある。その意味でも買って損は無い。

 また、アルバムを通して聴くと結構レベルの高い作品だということが分かる。どのナンバーもキャッチーで聴きやすく、なおかつヴァラエティに富んでいる。中にはプログレッシヴ・ロック的な展開を見せる曲もあり、BGMとして流すだけではなくシッカリと対峙して聴き込んでも満足出来る内容だ。なお、このグループは今も活動しているが、最近出たニューアルバムを試聴してみたところ、何の変哲も無い退屈なスムーズ・ジャズに成り果てていてガッカリした。やはり「モーニング・ダンス」を発売した頃が全盛期だったのだろう。

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