元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ぼくんち」

2009-10-10 06:56:15 | 映画の感想(は行)
 2003年作品。貧しくも逞しく生きる“姉弟”と、周囲の人々との触れ合いを描いたドラマ。製作コンセプトからどこかボタンが掛け違っているような映画だ。西原理恵子による原作漫画は未読だが、おそらく登場人物たちの貧乏ぶりを突き詰めていくことにより、乾いたユーモアの次元にまで昇華させているのだろう。それを可能にしたのは、西原独特のスカスカしたコマ割りと単純化されたキャラクターの玄妙さであるのは想像に難くない。

 ところがこれを実写映画にすると困ったことが起きる。たぶん原作の中では巧みに抽象化されていたであろう“貧乏くささ”が、ここではリアリズムとして提示されてしまうのだ。主人公たちの小汚くて惨めな生活がそのまんま映し出されると、観客としては“引く”しかない。

 もちろん、そのへんは監督の阪本順治も承知していたらしく、観月ありさや鳳蘭といった“やや浮世離れした素材”をキャスティングしたり、脇の登場人物を極端にカリカチュアライズさせたり、終盤には鈴木清順や寺山修司を思わせるような前衛的テイストも織り交ぜ、何とかリアリズムからの脱皮を図ってはいるのだが、いずれも不発。

 おかげでラストに主人公たちがすするラーメンが“文字通りの、ただ不味いだけのラーメン”になり、何の暗喩にも象徴にもならなくなっている。撮影がロケ主体であるのも間違いで、ここはスタジオで人工的セットを作るか、思い切って全編アニメーションにするべきだった。なお、子役の二人は非常に達者。

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